2024年3月に「JIS K 6541:2024 革(レザー)ー用語」の制定が行われ、
従来よりも「革」及び「レザー」という用語の使用できる製品が厳格化されました。
詳しく見ていきましょう。
目次
「●●革」「●●レザー」と言えるのは動物由来の素材だけ
今回のJIS制定の目玉はこの「革」「レザー」という呼び方に対しての基準が制定されたことと個人的には思います。
少し前より非動物性素材を粉砕し、樹脂と混合させシート状にした素材に対して「●●レザー」という呼称が使われることが増えており、市場における消費者の混乱を招いていたように思います。
皮革産業に身を置く私たちとしては、それらは合成皮革の一種であると考えておりましたが、専門知識のない一般消費者からすれば「レザー」とつくことで優良誤認を招いてしまうことを強く懸念していました。
今回のJISの制定を受け、「レザー」や「革」の言葉が誤解を生まない形で知れ渡っていってほしいと強く思います。
今回制定されたJISの細かい内容についてはこちらよりご確認ください(閲覧にはユーザー登録が必要です)
https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html
動物由来って?
まず「革(レザー)」を名乗るにあたって最も基本的な部分が「動物由来」であること、と制定されました。
私たちのお店で販売している皮革は基本的に食肉の副産物である動物の「皮」を腐らないように、素材として使えるように加工(鞣)をおこなったものですのでれっきとした「革(レザー)」です。
一方、インターネット上には「●●レザー」と呼ばれながら、廃棄される植物を粉砕したものを材料とした合成皮革や、本革と誤認しうる表現を用いたものが多く見受けられます。
固有名詞はここには書けませんが、そういったものは今後JIS規格に則れば、表記の変更求められることとなります。
具体的にはどう制定されたのか?
一部抜粋します。
・革、レザー(天然皮革、本革)
=皮本来の構造をほぼ保ち、腐らないようになめした動物の皮
これが革に対する基準です。今回の制定で一番大切なこと。
当店で取り扱いの革の床革を除く全てがこれになります。
・皮革繊維再生複合材
=革を粉々に粉砕して固めたもの。革が乾燥質量で50パーセント以上。樹脂の有無は問わない。
今まではレザーボードとかリサイクルレザーと呼ばれていたものですね。革を原材料とはしているが、粉砕しており皮本来の構造ではなくなっているため革とは呼べません。
・合成皮革
=土台となる織布や編物、不織布にポリ塩化ビニル(PVCなど)やポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)などの合成樹脂面を配してレザーの外観に似せたもの。
いわゆる合皮です。今まではPUレザーと呼ばれたり、ヴィーガンレザーと呼ばれるものの多くはこれにあたります。繰り返しますが合皮であり、本革、革、レザーではありません。
・人工皮革
=土台に特殊不織布を用いてポリ塩化ビニル(PVCなど)やポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)などの合成樹脂面を配してレザーの外観に似せたもの。また裏面(特殊不織布)を立毛させてスエード調、ベロア調、ヌバック調に加工したもの
合皮と混同されることが多いですが、人工皮革はその裏面が特徴的で、布っぽい裏面の合皮に対して、裏面も革に見えるように作られているのが人工皮革です。これらも革ではありません。
これらの中で「●●レザー」「●●革」を名乗れるのは一番最初の「革」素材だけです。
JISに法的な拘束力はない
JISは日本における国家規格ですが、法的な根拠とはなりません。
仮に動物由来でない素材を使って「●●レザー」という呼称を続けたとしても法による罰則はありません。
ただし百貨店など大手取扱店においては、正しい情報が求められることから、そういった店舗での取り扱いが難しくなることが予測されます。
自社ECなどで販売を続ける上では止める術はないと思います。
ただし優良誤認から消費者を守る、という意味では著しく害があるとみなされた場合消費者庁など関連省庁により法案が提出される可能性は大いにあります。
いずれにせよ、紛らわしい表現は避けることが望ましいと考えます。
素材にはそれぞれの素材の良さがある。優劣ではない
今回のJISの制定の背景は「消費者の誤認を招く恐れがあるため」であり、
決して素材それぞれの優劣の話ではありません。
消費者が、その素材に対して正しい知識を持ち、適切に商品を選ぶことができるようにするためです。
レザークラフトフェニックスは、革屋です。
革という素材がどういったもので、何が優れていて、何が劣っているか。
それらをたくさんの人に知ってもらうのが本懐です。
決して革以外の素材を貶めたいと思っていません。素材にはそれぞれの良さがあるからです。
今回のJISの制定を機に、正しい情報が一般的になることを切に願っております。
画像提供:日本皮革産業連合会
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