革を薄くする=漉きってなんのためにやるの?デメリットは?という話


先日「 触ってわかる レザークラフト初心者5レベルアップ講座」というセミナーをしまして。
動画やAIに聞いてもわからない、触ってみて理解してもらう、というセミナーです。

8/23(日) 触ってわかる レザークラフト初心者5レベルアップ講座and染色体験ワークショップ 次回は9/27(日) | phoenix blog | 1926年創業の革素材問屋のスタッフが、レザークラフトのあれこれを語ります。

で、セミナーで話していた「厚み調整の漉き」についてを文章でまとめておきます。
「なぜ薄くするの?」「薄くしたらどういうメリットが有るのか?」「デメリットは?」「どうやって薄くしているのか」などを書いておきます。

01 薄くするのが「漉き」というけど、「全体を薄くする」のと「一部分だけを薄くする」のは違う

フェニックスでは革を薄くする「漉き」をネットでも店頭でも受け付けています。
全面漉き(割り)加工 | ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス

業者にだす1枚革の漉き

店頭で行う20cm幅の漉き

これらを「漉き」と呼んでいますが、革業界ではこれ以外にも「革の端っこだけを薄くする=部分漉き」もあります。

「人に話したくなる革の話」革業界周辺の職業紹介シリーズ 「漉き屋」

02 全体を薄くする「全面漉き」ってどうやっているの?

フェニックスでは2026/09/29現在 、業者さんにお願いして自社革500円、他社革800円で漉きを請け負っています。

「人に話したくなる革の話」 革を薄くする仕事「漉き割り」の世界|JLIA 日本皮革産業連合会

03 そもそもなぜ薄くするの?段差が悪さをする

例えば極端な例ですが、厚さ2mmの革を少しずつずらして3枚重ねてみます。すると、革が1枚増える境目ごとに「高さ2mmの段差」ができます。

縫う側からすると、この段差はちょっとした壁です。手縫いでも邪魔になりますが、特にミシンでは、この2mmの段差を乗り越えながら縫わなければならないため、きれいに縫うのが難しくなります。

上記にあげたような「部分漉き」で縫う箇所だけを「ナナメ漉き」をすることで縫う箇所だけを0.5mmにする=段差を少しでも減らしたり、「全体漉き=漉き割り」で1mmにすることでも段差を解消します。

04 そもそもなぜ薄くするの?厚い革は曲がりにくい

さらに厚みがあればあるほど、革は曲がりづらくなります。これは柔らかい革だろうが、関係ありません。背中よりも腹の部分がのほうが革は柔らかいですが、それでも何枚も重ねたら曲がりづらくなります。

実際に数枚重ねて曲げればわかりやすいのですが、文章や絵で伝えるにはどうすればいいかな、と長年考えて考えて考えて思いついた説明が「内輪差・外輪差」です。

軽自動車が曲がるときより、大型トラックが曲がるときのほうが、内側を通るタイヤと外側を通るタイヤの軌道の差は大きくなります。
私は革の厚みも、これに似たイメージで説明しています。革を曲げると、内側と外側では必要になる長さが違います。厚くなればなるほど内側と外側が離れ、その差も大きくなります。

で、これが革の厚みと同じなわけです。厚みが大きい=内輪と外輪が大きくなる、ということです。厚みが大きくなればなるほど、革は曲がりづらくなります。

だから漉きで薄くする。

05 じゃあ、最初から薄い革を使えばいいじゃない?薄いデメリットはあるの?

最初から薄くするとこの曲げは楽になります。2mmよりも1mm革で作るほうが曲げやすくなるのは当然です。

ところが、薄くするとデメリットも生じえます。

  • コシ…革の内部にある硬さ
  • 張り…革の表面にある硬さ
  • 手触り…触感
  • ボリューム感・ふっくら感
  • 見た目
  • 場合によっては強度

など、薄くすることで失われるものもあります。薄くすると作りやすくなる一方で、革に求めていた質感や性質まで変わってしまうことがあるわけです。

薄くすると作りやすくなるメリットと表裏一体なわけです。

06 だから「曲がる箇所だけ薄くする」

部分漉き、というのは「革全体は2mmを維持しつつも曲がる箇所だけを0.5mmにしてあげることで革の質感を維持しつつも、曲がるところだけ都合よく薄くして作りやすくする」というものです。

曲がる箇所だけではなく、前述した「ミシンが縫製する部分だけをナナメ漉きをすることで段差を少しでも無くす」「端っこ6mm、厚みを0.2mmまで薄くすることで端を曲げやすくする=ヘリ漉き」などが存在するわけです。

部分漉きは、作り手が「ここは曲がってほしい」「ここは厚みを減らしたい」と、場所ごとに革の厚みを指示する作業なわけです。この考え方を持って下記を読むと理解しやすくなるかな、と思います。

「人に話したくなる革の話」革業界周辺の職業紹介シリーズ 「漉き屋」

07 逆のやり方もある――芯材

ここまで「革を薄くする」という話をしてきましたが、実は逆の考え方もあります。「薄い革に芯材を貼って、必要な部分を厚くする」というやり方です。

例えば革全体が1mmだったとして、そのままではコシやボリューム感が足りない。そこで芯材を貼って全体を厚くする。ただし、曲げたいところには芯材を貼らない。そうすると革そのものは全部1mmなのに、製品として見ると「厚いところ」と「薄いところ」を意図的に作ることができます。

私は芯材のセミナーで、これを「薄い素材を意図的に分厚くすることで、疑似的に部分漉きをした状態にする」と説明しています。

厚い革から必要なところだけ薄くするのが部分漉きなら、薄い革に必要なところだけ厚みを足していくのが芯材、と考えるとわかりやすいかな、と。

結局どちらもやっていることは同じで、革製品は場所によって厚みを変えているわけです。

08 革製品では「厚み」も設計している

ここまで見てきたように、革製品を作る際には単に「この革は2mmだから2mmのまま使う」というわけではありません。

全体を漉いて使いたい厚みにする。重なって段差ができる部分を薄くする。曲げたい部分だけを薄くして「ここで曲がれ」と指示する。逆に、薄い革に芯材を足して、必要な部分にコシや厚みを持たせることもあります。

つまり革製品では、縦何cm、横何cmという「形」だけではなく、どこを厚くして、どこを薄くするのかという「厚み」も設計しているわけです。

革を「漉く」というと、単純に革を薄くする加工に見えます。ですが、部分漉きまで含めて考えると、作り手が革の厚みを場所ごとに調整し、作りやすさや完成したときの形、感触までコントロールするための加工、と考えるとわかりやすいかな、と思います。

こういう話を今後もしています

上記の話は実際に資材や実物触りながら解説したほうがわかりやすいです。

直近では1年に1回だけの漉き屋さん見学ツアーを10/23に予定しています。

革日和in大阪 漉き屋とカバン・野球グラブメーカーを見学するてくてくツアー 2026年10月23日(大阪府) – こくちーずプロ

10/16-18は東京のレザーコネクトで芯材や5レベルアップセミナー開催予定です。
また各種SNSで告知しますので興味ある方は見ておいてください

leatherstudio_cc lit.link(リットリンク)

過去の関連blog:


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*