革の端部分を有効活用してダイオウグソクムシ的なキーケースを作る


珍しく頼まれてキーケース作り。
製作時間1,5時間でワイルドな感じで、と。
基本的にオーダーなどは受け付けないのだがまぁ交換条件があったので。

今回は革の作り手ならば「これ、どうしよう」と持て余し気味な腹部分を使ってワイルド~なキーケースの作り方をダラダラと載せてみましょう

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お金の話をするならば、、

個人的には革でお金儲けするならば、こういう端の部分でどれだけ利益を出せるか、だと思っていますわ。
ただ、端の部分=腹や首部分は繊維や形状がが一定でないため量産的なモノを作るには不向きです。

今回の作り方は量産向きでないやり方ですな。
漉き機などがなくてもできる作り方を書いていきますね。

準備として

・腹部分の革を表用1,2mm程度と内側用として1.0~0.8mmに漉いておきます。
・用意する金具はキーケースとホックのみ。
今回は手元にあったのでジャンパードットホック7060を使っています。

工程

 芯材革張り込み

・キーケース内側部分は腹部分を1,0から0.8mm程度に漉いておきます。
表と内側の厚みを変えることでメリハリをつけます。

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・本来は外側革を1.5mm程度にしておき真ん中部分を中漉きをして折れ曲がりやすくしておきます。
が、今回は重さを軽めに作って欲しいということなので表を1,2mmに薄くしておきます。
真ん中部分は折れ曲がりやすくする=他の部分を固くする、ということで真中部分以外に芯材を張りこんでおきます。これにより「張り」をもたせます。

・使った芯材は型紙などを作る際に使うチケンシを使っています。
(フェニックスならばA4切り革を購入する際に補強として同封している紙がそうですね)

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・接着剤はゴムのりを使います。
今回のケースではゴムのりか白ボンドが最適です。
塗る際は端っこまできっちりと塗っておきましょう。
端っこまできっちり塗ることがほんとにほんとにほんとに重要です。

ゴムのり – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP

・両面テープ、ゴムのり、白ボンドは使い分ける必要があります。それぞれメリットデメリットが異なりますので。

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・接着後にきっちりと芯材を切り落としておきます。

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・貼りこんだ紙を外側から5mm内側に小さく切り落とします。
本来は外の革から5mm小さめに裁断した紙を真ん中に貼るのが一番リスクが少ないです。

今回「芯材を貼ってから端っこ5mm切る」という結構リスキーなことをしたのは単なる横着です。

制作時間が短かったので横着しましたがきちんと測ったほうが結局時間は短く済んだように思えます(;´д`)トホホ…

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・5mm切り落とした理由はコバ処理のためです。
芯材が外に見えるよりは見えないように仕上げたほうがコバ処理の際にキレイに仕上がるからです。
コバ部分は異素材が交わらないほうが出来上がりはキレイかつ簡単です。

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・表パーツ最下段に「腹革を1cm程度の幅、かつ、0.4mm程度に漉いたもの」をゴムのりで貼っていきます。
この際に貼る革は一回り大きい物を張ります。
貼りこんだ後に裁ち落とします。
これにより裁断面がガタガタになりません

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・依頼主からの要望で金具が外に露出しないように、と言われたので金具すべてを革の下部分に納めます。
・最初にホックやカシメを打ち込んでしまうとミシン縫製の際に邪魔になりますので凸パーツだけをとりあえず入れておきます。
 すべて縫製後にホックやカシメを留めます。

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縫製

・次に貼りこむ腹部分の革を試しにあててマーキング、その後に下に重なる革の見えない部分を縫っていきます。
・下段革縫製>その上にパーツを重ねる>縫製、を繰り返していきます。
パーツの先っぽモサモサしている部分から上部分はゴムのりで接着しているだけです。
悪意をもってモサモサ部分を剥がそうとすればある程度剥がせてしまい下地部分が見えちゃいます。

ですのでパーツはできるだけ細く作り細かく縫製していくほうが剥がれなどの可能性は低くなります。

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・貼りこむパーツは上部部分に斜め漉きをしてなるべく段差が少なくなるように調整します。

斜め漉きはやり方を覚えれば手でも簡単に出来ます。
(大阪でも東京でも「手でやる革漉き講座」をまたやります)

これをしておかないとボコボコと段差が生じ、ミシン縫製の際に失敗率が高くなり、糸目が汚くなります。
ミシンでも手縫いでも全体的に段差はないように作るのがベターです。

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・昆虫かグソクムシか王蟲のようになりましたね。
依頼者は大喜びでした。

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金具留

・カシメやホックを留めます。
今回使ったホックは7070ジャンパードットホックです。
ジャンパードットホックはベルトやナチュラルロングウォレットを留める際に使われる強力なホックです。

キーケースくらいならば軽めのNO5ホックがオススメなのですが依頼主が男性でワイルド希望だったので7070ジャンパードットホックを使いました。

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ジャンパードットホック7060 10個セット – レザークラフトフェニックス …

・ジャンパードットホックは足の凸パーツがバネ頭にも流用出来ます。これによりバネもダボも頭をぺったんこに仕上げられます。
フェニックスではホックパーツの「頭だけ」10個売りなども行っています( ´∀`)bグッ!

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・留める際はハンドプレス駒で留めます。今回はぺったんこですので円盤駒の下駒を使います。
「そんなものはない!」という方は金属板を引いてください。

直径50mm円盤型駒

・むぅ、使用した革がオイルヌメだったのでカシメの跡が表に出てきていますね。ホックやカシメの平べったい凸パーツに芯材などを張り表に浮き上がらないようにしておくべきでしたな。

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・角部分を裁ち落とすのに彫刻刀「浅丸」を使っています。
小物ならば彫刻刀で十分ですよ
この時に垂直、ではなく、30度ほどに傾けて使うのがミソです。
片刃は外に逃げちゃうのよ

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コバ処理

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・今回はオイルヌメでしたのでナチュラルに仕上げられつつも自然な風合いが出せる「フェニックスコート」を使っています。

フェニックスコート

塗るときはコバフェルトを使っていますが綿棒でも構いません

コバフェルト

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・が、このように一部分の染まりが悪い。こういう時は接着剤が付着しているケースが多いですね。
・ゴムのりはゴムのりに惹かれ合う!、ので、ゴムのりで掃除した後に紙やすりでガッシュガッシュと削ります。

・その後目止め液を塗り、乾く前にサンドナイロンで一定方向にガッシュガッシュと削りつつ撫でつけていきます。これにより革のコバ面がツルツルになっていきます。
固めの革は目止め液+サンドナイロンを行うとかなりツルツルになりますよ。

目止め液
サンドナイロン

・乾燥する前にフェニックスコート投入。
半乾燥の状態でコバ処理をすることでより強固に目止め液とコバ液が結びついてくれます。

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・キレイにできました~ まぁフェニックスコートは染料ですのでムラッ気が出るような仕上げとなります。

出来上がり

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昆虫腹の表部分と裏側の2パーツで今回作りました。

本来は「昆虫腹の表」「裏側」の2つではなく「昆虫腹の表」と「それを縫い付ける芯材部分」+「裏側」の3層構造にしておくと縫い目が裏側にも出てこないので美しく強度が出るでしょうね。ただ、そうなると今度は重さと厚みの問題が出てきますね。

まぁ、手間かかり時間もかかってしまいます。

腹部分を有効活用したい方はこのようなやり方もありますよ、ということで。
「同じものが作れない」「安定的にこの手のモノは作れない」のが欠点です。
こういうのが好きな人には受けの良い作り方ですね( ´∀`)bグッ!

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