フェニックスで売っている真鍮ホックは真鍮メッキなの?という相談から「こんなことで金具は錆びる」という話part2


「フェニックスさんで売っているホックを使わせてもらっているのですが、メッキが剥げたようなのですが」

ん?うちで扱っているホックは真鍮無垢のはずなんだがなぁ。実物を見せてくださいな。その際に保存環境や使用環境なども詳しく写真で教えてくださいな

相談苦情は遠慮なく行ってください

当社の力にもなりますし、blogのネタにもなります。

ただ

・「俺は20年この業界で食っているのにこんなことはじめてだ!」
・「明らかにおかしい!絶対そちらの責任だ!全部弁償しろ!」

というような口調でお問い合わせはお止めください。

今回の相談の方は上記のような口調ではなく、「~~という症例が出ているのですがこれは~~でしょうか」と尋ねてくださいました。
その流れで「どのような環境で保存していたか。どのように使っていたか。」などの前に進む追跡調査が行え、結果的に早期に解決できました。

今回のケースの原因の一つは「袋に入れていた」のが良くなかった

実物サンプルをそのままの状態で送ってもらいました。このときに「そのまま」送ってもらうってのがすごく重要です。

今回の「そのまま」は袋詰されていました。

クリスタル袋やOPPと呼ばれる透明度の高い袋に商品を入れて、保存していたら白くメッキが剥げていた、ということです。

まず、この袋詰が問題です。
前回のトラブルの際は、自分で染色した革で製品作り>ホックを止める>チャックのビニール袋に保存>見事にサビサビに、というケースでした。

ホックが錆びた!というケースから「こんなことで金具は錆びる」という話 | phoenix blog

 

これは原因は「染色した後の酢酸から揮発した成分がビニールチャック袋の中に充満して、それが金属を腐食した」というものでした。

今回のケースで当方が疑ったのは前回と同じケースです。

「革製品を呼吸ができなくなるような密閉容器の中に入れておくと問題が生じる」

 

革を広げると革の匂いがするのはオイルや薬品が揮発している

できたてホヤホヤで当社に届き、開いた直後には「匂い」がします。
革の匂い、オイルの匂い、薬品の匂いなどです。これらは生産直後から徐々に革から抜けていく揮発成分が私達の鼻にはいり、臭ってきているわけです。

で、革で製品を作り、チャック袋に入れる、というのはこの揮発成分が袋に充満してしまうわけです。この成分がホックなどに悪さをしたのが前回の錆事件でした。

今回も同じように密閉した袋の中で揮発成分が悪さをした可能性が高いです。
どのような悪さをしたのか、金具屋さんと相談してみました。

今回のケースの結論は錆が原因でした

No.1 バネホック – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス

今回の事件では「ホックのメッキが取れたんじゃないですか?銀色に見えるから、ホックの上に金色の真鍮メッキをかけているんじゃないですか?」という相談なわけです。

論点は2つ。

1 ほんとに真鍮無垢なの?
2 そうじゃないなら何が起こっているのか?

さて、当社取引先の金具屋さんに聞いてみよう。これってメッキ不良?

金具屋さん「ほぅ、ムラキくん、ちょっとそこに正座しなさい ( ゚Д゚)y─┛~~」

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

フェニックスに納品されているカシメやホックの真鍮製は、間違いなく真鍮無垢

金具屋さん「真鍮無垢、と言われて納品している以上、真鍮メッキを誤って納品なんてありえないよ。」

でも実際に見てみたら金色が薄くなっているんよ?これはメッキ剥がれちゃうの?

「実物見せてごらん。。。。ムラキくん、これはメッキ剥がれじゃないよ。
サビだよ、錆」

さび!?

錆の色はいろいろあって今回の錆は白っぽい色

でもメッキ剥げたように銀色に見えるよ?錆なの、これ?

「白っぽく見えているだけ。白っぽい錆もあるんだよ。だから金属磨きで磨いてごらん。」

金属磨きで磨いてみよう!

私が持っているのはドイツ製の金属磨きのWENOLというものです。金属磨きでメジャーなピカールよりもこちらを使っています。まぁ、昔彫金していたときの名残ですね。

 

写真一枚目をアップで見てもらいたいのですが、黒ずんだように見えますが、磨くと3枚目のようにピカピカです。金色に戻っています。

こちらも1枚めが分かりづらいですが、ムラっぽく、くすんでいますが、4枚目はピカピカです

下記写真は右半分は磨いて、左半分はそのままです。左半分がくすんでいるのがわかる、かな、と思います。

 

ダボの裏面です。こちらはわかりやすいですね。

原因は袋詰したため生じた錆

今回の症例はこのような流れで生じたと思われます。

1 袋詰したため揮発成分が充満
2 揮発した成分がホック表面に施されている錆よけのクリアー塗装を侵食
3 クリアーがなくなり錆びやすくなった
4 密閉した容器の中で革の中に入っている微小な水分も袋の中に貯まる
5 水分の逃げ道がなく、クリアー塗装がはげたホックに突撃
6 白っぽい錆が発生。

これが今回のケースです。

このようなことが生じないようにするには?

革製品を密閉した袋に入れたら駄目です。
チャック袋もそうですが、OPP袋もあまり良くありませんね。

過去の事例と考えるとやはり金属パーツと密閉した革製品は相性があまり良くないと思われます。

どうしても密閉容器に入れる、というのでしたらポンチなどで袋に穴をあけてあげてください。水分や揮発成分の逃げ道を作ってあげてくださいね

ハトメ抜き(穴あけポンチ) – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス

クラフト社製のこのポンチはコストパフォーマンスが非常に優れていると思います。
100均やホームセンターのポンチは革用としてはいまいちですのでオススメしません。

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