フェニックスの扱っている革でウエットフォーミングに適している革を教えてください 、という質問に数十行回答する


フェニックスの扱っている革でウエットフォーミングに適している革を教えてください 。

という質問が。

今回はウェットフォーミングが出来る革は何故限られているのか。タンニン鞣しでもウェットフォーミングが出来ない革があるのはなぜか、なども含めて解説していきます。

Phoenixではお客様からの問い合わせ(主にメール)で様々なご質問にお答えします

レザークラフトをやる上で技法や素材について疑問に思ったことがあれば、
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知識経験豊富なスタッフがお答えいたします。

また、取引先や関係先のプロフェッショナルの意見を伺ったりもできますので、
「材料屋にこんなこと聞いていいものか?」
「Phoenixで買い物したことないけど、聞くだけ聞いてみよう」
といった場合でも大歓迎です。その後にうちのお客さんになってもらえればなお嬉しいです。

「大阪で美味しいたこ焼き屋はどこ?」
など革やレザークラフトと関係ないご質問はスルーさせていただきますが、
ちょっとでも関係あれば好奇心旺盛なスタッフがお答えいたしますので、お気軽にどうぞ!

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また、場合によってはこうやってブログに質問と回答を紹介させていただく場合もあります。
その際は質問主が誰なのかなどは一切伏せて掲載しますので、ご安心ください。

ウェットフォーミング・絞り・立体成型出来る革は限られている

お問い合わせいただいておりましたウェットフォーミングについてですが、
基本的にウェットフォーミングはタンニンを十分に含んだ革(≒タンニンなめし革)にだけ使える技法です。

また、タンニンを含んだ革の中でも

・タンニンの量
・トップコートの種類
・含有オイル量の多少
・色堅牢度

がウェットフォーミングの向き不向きに関係していきます。順にご説明いたし
ます。

タンニンの量

これは鞣し(革を腐らなくする、皮から革へと変える加工)の際に、
革を鞣剤に晒すのですが、その鞣剤にタンニンがどれくらい含まれているか・鞣し後に革にどれだけタンニンが含有しているか、で変わってきます。
ウェットフォーミンングはタンニン革の可塑性という性質を利用していますので、
革にタンニンが含まれていないor量が少ないと十分に可塑性が発揮されず、
濡らして乾かした後の保形力が小さくなります。
ですので、まず選ぶ革の基礎としてその革がタンニンを十分に有しているかが大切です。

トップコートの種類

まずトップコートというのは革の表面に施してある仕上げ加工の種類です。
色止めの為のトップコートや艶出しの為の加工など色々種類はありますが、
トップコートに使われている薬品によって水の浸透を妨げる場合や、
水に浸すことで風合いが代わってしまう加工というものがございます。

当店取り扱い革でいうと具体的には

・イビザ
・ルガトー
・カッソーロ
・アラスカ

で使われているトップコート剤は水の浸透を妨げ、なおかつ濡れることで風合
いが代わってしまいますので、ウェットフォーミングには向いていません。

また、グレージングという方法で艶出し加工を施している革の

・コードバン

も濡れることでグレージング効果を損ないます。
ですので、向いていません。

含有オイル量の多いか少ないか

次に含有オイル量についてですが、革にはどんな革でも多少のオイルは含まれておりますが、一般的にオイルドレザー(オイルレザー)と呼ばれるような通常よりもオイルの含有量が多い革はウェットフォーミングの際に水の浸透をオイルが阻害します。
オイルドレザーでウェットフォーミングは出来なくはありませんが均一に水を含ませることが難しく、やりにくい革に分類されます。

水が浸透する隙間があまり無い、という考え方です。

色彩堅牢度

最後に色彩堅牢度についてですが、要は色落ちしやすい革かどうかです。
水は湿摩擦堅牢度といって水にぬれた状態での色落ちしやすさの度合いというものがありますが、ウェットフォーミングの場合、当然この数値が低いと色落ちがしやすく、濡らす前と後で色の風合いが大きく違ってしまいます。

鮮やかな色だったものが発色が悪くなってしまったり、色調が変わってしまっ
たりします。ですので、ウェットフォーミングできますが、革の風合いが変わって
しまうという意味で向いていない分類です。

フェニックスで一番ウェットフォーミングに向いている革はタンロー

最後にまとめますと、一番ウェットフォーミングに向いている革というのは下記のタンローです。

・昭南タンロー

このタンローのように染色加工や仕上げ加工があまり施されていない革が一番やりやすいで
す。それ以外はやりにくい、もしくはやることで風合いが変わってしまうと考えて頂いてもよいくらいです。

ただし、ウェットフォーミング後に加脂したり、色を付けることで風合いを戻
したり、加水の加減を調整してウェットフォーミングすることで影響を最小限に抑えた
りする工夫は可能です。

向いていない革でも技術や工具で出来ることもある

また、上記の革じゃないと出来ない、ということはありません。タンニンなめしの革でオイル調でも技術や木型によってはきれいにウェットフォーミング出来ることもあります。

《作品紹介》オイルヌメでの立体成型: レザークラフト・フェニックス

ウェットフォーミングを紹介している本

絞り技法・立体成型・ウェットフォーム技法を学びたいのだけど、どの本がいいの? | phoenix blog

『大人のレザークラフトⅡ 紳士の革小物』 では絞り技法を紹介しています。

〜 万年筆ケース 〜

「絞り」という伝統的な革の加工法を巧みに使い、見事な曲線美を身に纏った万年筆ケース。絞り技法には「木型」が必要になりますが、MDFという加工しやすい木材を使った、画期的な木型の制作方法も掲載します。木工初心者の方でも、簡単な道具のみで作れます。

『大人のレザークラフトⅡ 紳士の革小物』 – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス

 

ウェットフォーミングって難しい?

木型などの成型用の型が必要となりますので、全くの初心者が・・・となると
少しハードルは高いですが、逆にいうと型さえあればそこまで難しいとは思いません。
革を濡らして、型で成型して、乾燥させて、仕上げる
というだけでそれらしい仕上がりになるのもウェットフォーミングの魅力です。

ですので、脱・初級といったあたりで是非ともトライしていただきたいと思ってます。

 

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