布を染めたことはあるが、革を染める際には何を注意するのか?という相談から


。毎回自己紹介が難しいムラキ、です。

今日はレザーソムリエの手伝いでふらふらと講師手伝いをしていました。

 

で、最後の質問で「布を染めたことはあるが、革を染める際に何を気をつけたいいのか」という内容が。

これに対しての回答が他の講師陣からは「バインダーというものがあり、これを塗ることで染まります」というものでした。

この回答、というか質問の流れは、ズレが有り非常に面白かったため、他の講師の回答に横槍を入れました。

では、どういうズレがあったのか。なぜそれに対して面白さを感じたのか。横槍をいれるリスクなどを解説してみますわ~

レザーソムリエってなに?

レザーソムリエ

皮製品は好きだが、素材の特徴は? お手入れ方法は?

革製品の素材について、ものづくりの特徴、お手入れの方法など、革製品について多くの知識があったら、お気に入りのバッグや靴を長く使えて楽しめるのに、そんな気持ちを持っている方は多いと思います。

そんな想いに応えるため、「レザーソムリエ」は2017年よりスタートしました。皮革や革製品について一定の知識を有する方を「レザーソムリエ」として育成し、革の持つ魅力を深く理解し、愛着を持って革製品を使用し、また、多くの人々に天然皮革の良さを知っていただけるようこの取組を始めました。

1日でおわる初級・中級講座があります。これは有料で行われますね。その後、2025年ならば11月9日に全国のテストセンターで受験できるコンピューターを使用した試験(CBT方式)が行われます。

レザーソムリエ資格試験 | レザーソムリエ

お手伝いって何しているの?

昨日は中級講座、本日は初級講座のお手伝いをしていました。初級講座は座学1時間したのちに、「牛」「革仕上げ」「小判もの(羊、ヤギetc)」「爬虫類」の4つの机を20人弱が18分解説を見聞きしつつ革を触る>次の机に移動、ということを4セット行います。講師は20分✕4回同じことを繰り返すわけですね。この講師を行っていました(ヽ´ω`)

最後に10分ほどFAQコーナーが

最後にアンケートを書いてもらいます。これはグーグルフォームなりを使ったもので、参加者皆さんに書いてもらい、出る時に「アンケート答えたよ!」画面を見せてもらって退場してもらう、というものです。

このアンケート書いてもらう時間に参加者から質問をもらいます。

結構回答答えるのが難しい

回答が難しい、というわけではなくて、、、回答が難しい、というのは理由がいくつかあります。

1つは、回答講師はそれぞれの専門家が会場にはいるわけです。今回でしたら、革問屋さん数人・革のお手入れの専門家がいました。これに対して私は請負の職人・革屋お手伝い、という立場です。私、この現場では若造ですのであまり回答しづらいんですよね。ヘタに他の回答講師に口出しすると後で「若造が、生意気な!」とチクチクされる可能性もあるわけです \(^o^)/
(ウソデスヨ、みんな優しい講師バカリですよ。ホントダヨ)

もう1つは質問者さんの意図を理解しないと回答出来ない、です。今回のケースでは「布を染めたことはあるが、革を染める際に何を気をつけたいいのか」というものでした。

まぁ、単に「革の染める注意点だな」となるわけですが、講師A先生は「染めるにはバインダーというものが使われます。これを混ぜることで革製品の染料の定着を良くします」というものでした。講師B先生は「革の製造過程ではバインダーを使い、専用の染料が使われます」というものでした。

で、あまりやりたくなかったのですが、横槍を入れました。

質問者の意図は「革素材を染めるのには何を気をつければいいか」というものです

つまり、これは「自分で革素材を染める」というクラフト領域なわけです。A先生の回答は「革製品の染め替えかな」と思い回答しました。B先生の回答は「革素材をタンナーで染める際の注意点」を聞きたいんだな、と思い回答しました。 誰も間違っていません。でも質問者の意図はあくまで「布を染めたことがあるが、革を染める際の注意点はなにか?」というものでした。

このように質問に対する回答は「相手がどういう立場や経験をもって」「なんの意図を持って聞いているか」を解明してからではないと質問者と回答者の間にすれ違いが生じえます。

フェニックスでは商品や技術質問に対して回答をしますが、このすれ違いを解決するために時間がかかります。場合によっては質問文20文字に対して、「それはこういう意図ですか?」と聞くために400文字の文章を書かなきゃいけないこともありえます。

今回の横槍では、、、、

「すいません、他の講師の方の回答もありますが、追加で質問者さんに質問を聞きますが、、、質問者さんは布を染めた経験がある、ということですよね?革製品を染めたい、というわけでも革1枚を染めたい、というわけではなく、自分で革素材を染める際には布を染めるのと違い何を注意すればいいか?という質問意図でしょうか?」 >yes

「その場合の回答ですが、まずは染める染料やバインダー、ではなく、染めるための革、ヌメ革、から解説が必要となります。ただ、これって数分の回答では大変ですので終了後に私と雑談しましょう!」

という回答となりました。が、終了後回答で私が他の方の質問回答に手間取ったため、質問者さんが「この後予定あるので!」と帰られちゃいました。ごめんなさい(;・∀・)

「じゃぁ、今日中に私のxかインスタで回答書いておきますのでまた見てくださいね」 という一言を送っておきました。で今のblog書きなわけですね。 はい、ここまでが質問回答をする前の、解説なわけです。なっげぇ前書きだわ、、、

布を染めたことはあるが、革を染める注意点は?という質問回答は

ここらもマニアックに解説すれば「バインダーの役割とは、、」などあるんですが、今回は下記の想定で解説していきます

・質問者さんは布は染めたことがある
・革を趣味で染めてみたい

という想定ですね。

一般的に布を染める工程は、、

 

工程 内容 備考
洗浄(精練) 汚れや糊、油分を落とす 洗剤や炭酸ソーダを使用することも
前処理(必要に応じて) 媒染処理や下地剤処理 草木染めや酸性染料の場合に特に重要
染色 湯に溶かした染料に浸け、温度と時間を調整 染料の種類で温度・時間・pHが異なる
媒染/色止め処理(必要に応じて) 金属塩を用いた媒染や、後処理剤で色止め 草木染めではここが非常に重要
洗浄・すすぎ 余分な染料を落とす 水が透明になるまでしっかり
定着処理(熱や薬品) アイロンや蒸しで染料を繊維に固定 反応染料や分散染料で重要
乾燥 陰干しが基本。直射日光は避ける 縮みや色ムラに注意

1洗浄工程・2前処理で、染めやすい下地を用意し、3染色で染める。この際に鍋で煮ることで温度管理・時間・phなどを調整します。4媒染色止めで染めた染料が落ちない処理を行い、5洗浄で余計な染料を落とす。6定着処理で繊維(植物orタンパク質=絹)に固定して7乾燥工程に入るわけです。

結構たいへんですな、布の染色は(;・∀・)

それに対して革の染色は染められる革「ヌメ革」を用意する

革の場合は大前提として「染めるのに適した革、ヌメ革を用意する」のが最初となります。ヌメ革は定義付けが人によって異なる厄介な単語となりますが、フェニックスでは「完成品の2歩手前で留めた革」となります。完成の2歩手前で留めているので、あなた自身の手で染めたり、加工をし、最後に色止めを行ってくださいね、という革なわけです。

【教えてよこいさん】ヌメ革とタンローってどう違う? | phoenix blog | 1926年創業の革素材問屋のスタッフが、レザークラフトのあれこれを語ります。

ヌメ革は定義が会社や立場によって異なります。例えば、レザーソムリエ講師も務めるタンナー山陽さんのblogではヌメの定義は下記となります。

1.植物タンニンで鞣された革であること
2.型押しや表面処理をしていない革であること
3.ピット槽でタンニンなめしを行っている革

今さら聞けない「ヌメ革」って何? | 株式会社山陽 | Sanyo Leather

ほぼ当社と同じですが、山陽さんは「3.ピット槽でタンニンなめしを行っている革 」という条件が加わっています。

「なんで会社によって回答が異なるんだ!?」 山陽さんはピットという特別な設備でヌメ革を作っているため、「彼らの定義ではピット槽で作っているもの、というのがヌメ革定義の絶対条件」となるわけです。

他にも皮革産業連合会が作ってくれた皮革用語辞典ではヌメ革は、、

読み方

ぬめ(かわ)

英語
Case leather, Vegetable tanned leather

意味

牛皮の植物タンニン鞣し革で、底革ほどタンニン剤を充填せずに、比較的軽い鞣しを行う。通常、半裁革で鞣され、乾燥後に染革工場で必要な厚度に漉き、染色、加脂工程や仕上げ工程が施されてベルト、鞄、小物用革やレザークラフト用革となる。

ぬめ(𩊠)(革)、 滑(革)

 「革を染めてみたい」という場合は工程や染料の前に、まずこの「ヌメ革」という完成品手前状態の革が必要となります。
一応書いておきますがクロムの下地革などもありますが、まずわかりやすく説明するために「革染色したいならばヌメ革を買ったほうがいいよ」とここでは提案しておきます)

ヌメ革を準備したうえで革はどう染めるの?

工程は下記となります

工程番号 工程名 内容 補足・注意点
表面の確認と軽い湿らせ処理 ムラを防ぐため、霧吹きや軽い水拭きで革全体を均一に湿らせる 水をかけすぎるとにじむため注意
染色 スポンジ・布・刷毛・スプレー等で染料を塗布 一方向に塗る、数回に分けて重ねるとムラになりにくい
乾燥 自然乾燥(日陰・風通しのよい場所)で染料を定着 急激な乾燥は避ける(割れ・縮みの原因)
色止め・保護処理 レザーコートやアクリルフィニッシャーを塗布し、色移り・摩擦・水濡れを防ぐ ツヤあり/なしが選べる。刷毛やスポンジで薄く塗布

1軽く湿らせる …ヌメ革表面をスプレーなどで軽く湿らせます。これにより染料が入り込みやすい入口を作るわけです。

2染色…専用の革を染める染料で染めます。布はセルロースや絹を染めるもののため、革には応用出来ません。あくまで革専用の染料を用意してください

3乾燥…自然乾燥です。日光に当てたり、ドライヤーなどは使いません。これは濡れたヌメ革、というのは耐熱性が下がるためです。これは革製品も同じなのですが、革は耐熱性がありますが、「濡れた状態で高温にさらす」のはあまりよろしくはありません。自然な風通しよくした状態で乾燥させてください

4色止め…布と同じですが、布のように媒染で煮たり、などはありません。あくまで表面処理としてコーティングなどを行います。

こうしてみると布よりも遥かに簡単ですね。ただ、染めるための下地としてのヌメ革、の用意がめんどい、というのが布染色とは大きな違いかな、と思います。

質問回答って、「どういう質問意図かな」と聞くのにコストがかかる

回答そのものよりも「質問者がどういう意図なのか」「どこまで解説したほうがいいか」「相手の持っている知識レベルはどれくらいか?」「相手はどのレベルの回答を求めているか」などの判断のほうがコスト(時間や推測)がかかります。

これは「だから回答するのがめんどい」というわけじゃないです。質問は構わないのですが、「それはどういう意図ですか?」「どこまでご存知ですか?」などの質問回答をするための質問をこちらはガンガンと投げかけます。答える方も真剣だからこそ、質問者さんもコストかけてもらいます、というお話でしたわ

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