フェニックスで酷使しているニッピ機械のスリッターの下ローラーを変えました。
(前回は2,014年11月に交換していますので5年ちょいですね。今回はちょっと交換が遅かったです)
当社の使い方ならば最低でも2年に一度は変えないといけないですな。
わたしもいつまでフェニックスにいるかわかりませんので、のちのスタッフのために手順を残しておこうと思います。
あと、ついでに「スリッターという機械がどれだけよく出来ているか」などを書き残しておきましょう。
目次
スリッター?ベルト切り機?レースカッター?
正式名称はスリッターですね。エンドレスベルト用スリッターとニッピ機械では呼ばれています。
当社ではベルトなどを切るので「ベルト切り機」と呼んでいたりします。世間では「レースカッター」と呼ぶ方もおられますね。
どういう構造?
ドーナッツ状の刃がぐるぐると回転。下ローラーもそれと同じ速度でぐるぐると回転。
これにより自動で同じ幅に切れていきます。
刃と刃の間に挟み込む金属製のドーナッツは「スペーサー」と呼ばれます。3mm,5mm、20mm,25mm、などがあり、これらを組み合わせて30mmを切る、18mmを切る、などが可能です。
すごい便利!でもここらが大変
便利ですけど、このスペーサーを組み替えるのは10分ほどはかかります。ですので「そんな機械があるならば1本だけ 23mmに切ってください」と言われると結構たいへんです。
「革1枚を全部23mmに切ってください!」という場合には大変便利な機械です。
フェニックスでは一応「23mmを1本だけ切ってください」「革1枚を全部23mmで切ってください」というのも可能です。最低料金などが決まっていますので下記を御覧ください。
ベルト裁断加工 | レザークラフト Phoenix(フェニックス) -レザークラフトの材料店 革、金具、道具、テキスト、教則本
で、何を交換したの?下ローラーってなに?
下ローラーと呼ばれているものです。
刃型の裁断でも革包丁やカッターによる裁断でも同じですが、刃と同じくらい重要なのは「土台」です。
イメージとしてはまな板ですね。まな板がしっかりしていると大根もお肉もきれいに切れます。まな板がガタガタになると大根もネギも切れなくなります。切れたとしても素材がきれいに切れなかったり、包丁も痛みます。
この機械も同じです。
左が取り替えた下ローラー、右が取り替える前のものです。もっと早くに取り替えないと駄目ですね、こりゃ(;・∀・)
取り替え手順
用意する工具はマイナスドライバーとスパナのみ。
まずはステージと呼ばれる部分のネジ4つを外します。
ステージ部分の土台を下まで下げておきましょう。このネジを最下限まで下げておきます。
ネジを外すとこのように横からステージを引っこ抜けます。
で、写真にあるようにスパナで六角ボルト2本を外します。
外すとこのように下ローラーが1枚ずつ外れます。
全部はずしてしまいましょう。使いすぎですな、ここまでいくと(;・∀・)
あとは逆の手順で戻すだけです。
ステージ土台の高さ調整ですが、かならず目視で歯車と歯車ががっちするようにあげてください。
2mmずれると歯車同士がぶつかり痛みますので。
想定質問回答
えっ!下のローラーってバラバラなの!?
「フェニックスに置いてあった予備の下ローラーって左のように1本だったから、バラバラになるとは思いませんでした。なんで?」
ニッピ機械のこのスリッターは高い機種になると切れる幅が大きくなります。機械は大きくなればなるほど粗裁断(作業しやすいように小さくしておく)がいらなくなりますので作業性が良くなります。その分価格があがったり、置く場所が食われてしまいますな。
で、下ローラーがこのようにバラバラになっているメリットは2つ。
1つは機種が変わっても「この機種は50cmの機械だから、50cm用の専用の下ローラーパーツを用意!」なんてことはないわけです。この1cm幅の下ローラーを50本買っておけばいいだけです。
もう1つは「うちの会社は20mmしか切らないんだ!」という場合は傷んだ下ローラーだけ買い換えればいい。または隣のローラーと交換すればいいだけ。
バラバラだから便利なわけです。バラバラだからうまくいくわけです。
この機械お高いんでしょ?個人ではどうすればいいんですか?
ストラップカッター、便利ですよ。
婚約指輪贈呈に見えるストラップカッターの使い方 | phoenix blog
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ストラップカッター 替刃 – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP 替刃必須ですので買っておきなはれ
市販品でスリッターと同じようなもので手動なものもあるけど、あれはどうなの?
マルチレースカッター、という名前で販売されているものですね。
切れません、あれ。工具が悪いわけじゃないんです。知識がないと使いこなせないですよ。
マルチレースカッターで検索して出てくる工具を見てみましょう。画像も盗用、と言われると嫌なので検索ページだけ貼っておきます。
この機械、悪いわけじゃないんです。ただ、対象の革を選びます。
厚み1,6mm程度、合成タンニンやオイルが強いタンニン革じゃないときれいに切れません。
苦手なのはふにゃふにゃのクロム革、薄いクロム革が苦手です。切れづらいです。また、オイルが入っていないヌメ系の革は切れ味が落ちるのがものすごく早いです。
なぜこれらの革が苦手なのか?原因は2つ。
1つ目は「スリッターと違い円盤刃じゃないので、1箇所でひたすら切っていく。そのためその1箇所の切れ味が鈍りやすい。結果的に硬い革やヌメ革系統は刃が鈍る」ということ。解決策は頻繁に刃を交換しましょう、です。
2つ目は「スリッターは下ローラーがあるため、自動で革を送ってくれる。それに対してマルチレースカッターは手動で送る」 機械ですと自動で送り込んでくれますが、工具ですと自力です。これが厄介です。
スリッターですと、刃が円盤刃ですので、均等に切れ味が落ちていきます。1箇所だけガツンと切れ味が落ちることはないわけです。また、モーターの力で送り込んでくれるので、多少切れ味悪くても力任せに送り込みます。
それに対してマルチレースカッターですと、ちょっとでも切れ味が悪いと引っかかるようになり、革がスムーズに切れません。過去に言われた「うまく使えない!」という相談に対しての回答は「刃を頻繁に替えましょう」でした。
レースカッターにせよ、マルチレースカッターにせよ、ストラップカッターにせよ、手動で動かす工具は刃を頻繁に替えないと威力を発揮しない、と思っておいてください。
スリッターは偉大!
スリッターは偉大な機械です。ただ、ある程度10本以上を頻繁に切る、という人のための工具であり、「25mmを1本だけ」「20mmを2本だけ切りたい」などの場合は手動の工具のほうがオススメです。
また、「この機械を使っていて指が8本になった」というような話も噂で聞いたこともある危険といや危険な機械です(;・∀・)
まぁ、この機械に限らずですが、「切る」という行為に重要なのは「刃の切れ味」と「土台」です。切るための土台が傷んだときは買い替えましょうね。
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