国立科学博物館で見る革の話:ワニやら鯨やら織り機やら


毎度です「計算通りいかねぇなぁ、、」ムラキです

東京に行ったときは美術館なりイベントなり巡りますが、国立科学博物館もよくふらつきます。年に2回ほど企画展目当てでも行きますが常設展示を見るだけで1日は潰れます。今回も西洋美術館を見に行こうと思っていましたが、見事に国立科学博物館で1日が潰れました。

今回のblogでは国立科学博物館で見かける皮と革に関係する話です。

 

企画展ワニで見る皮と革の話

3月1日まで行われている企画展ワニ、はワニの生態が垣間見える展示なのですが、これを見るとワニ革についても理解が深まります。

ワニ | 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo

・ワニの頭骨は皮と癒着しているため標本・革生産時に頭部分は使えない

・ワニの背中の鱗板と呼ばれる部分がありカルシウムの固まり

・アボガドの和名は「鰐梨」 ほぼ使われない

・ラコステが鰐をモチーフはもちろん知っていたがクロックスもワニ由来

・先日ノーベル賞受賞した坂口志文氏の所属する大阪大学の公式キャラクターもワニ
<これは1964年にキャンパス内から発掘されたマチカネワニの化石がモチーフ
<2025年6月にこの化石は特別天然記念物に認定。さらに12月に坂口氏がノーベル賞授賞式でワニのぬいぐるみを持参。(もってるなぁ、阪大、、)
ノーベル賞受賞で話題 阪大「ワニ博士」の正体は“約60年前発見マチカネワニの化石”モデルにした公式キャラ 受賞決定で販売数は約30倍!一部商品は売り切れに | 特集 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ

マチカネワニ化石 豊中市

・アリゲーター・クロコダイルの見分け方は頭部

牛の胃袋と舌展示

国立科学博物館は企画展や特別展も見どころですが、常設展がものすごく莫大です。基本的に1日では回れないレベル。で、その中でも革に関係しそうな話をピックアップしてみると、、

国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo 1Fでは動物に関する展示が見られます

・牛は草だけで大きくなる理由
>草からの栄養素はたいしてなく、4つの胃袋で発酵=腐らせる。その発酵過程で増えた菌を吸収している。

・牛の腸は40mで展示されている。胃袋4つも展示されている

 

下記は牛の第2胃袋ハチノスの革、です

・牛の舌は植物を絡め取るために長い。舌も展示されている。なんなら触れる

クードゥーの剥製も展示されている

国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo

3Fでは多数の標本剥製が見ることができます。

ライオンさんの後ろ

クードゥー NAKED/スエード加工(CHARLES・F・STEAD社製)
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アフリカに広く生息するウシ科の動物 KUDU(クードゥー)の革です。

イギリスのリーズにある、1904年創業の老舗タンナー チャールズ・F・ステッド社が製造する両面使いができる吟付きスエード革です。

吟面側は非常に野性味溢れる表情で、傷が非常にたくさん刻まれているのが特徴です。
ワイルドな革といえばクードゥーですね!

床面は非常に滑らかな心地の良いスエードで、両面で様々な用途にお使いいただけます。

クードゥー NAKED/スエード加工(CHARLES・F・STEAD社製)

あれ!?ダチョウの足の革ってこの部位だったのか、、

長年ダチョウの足の革を革のセミナーで解説していたのですが、爪先根本部分なんですな、この革。。

鯨の骨格標本や解説から革の話

鯨の脳内には脳油と呼ばれるものがあり、脳内でエコーロケーションの反射のために使われていた、と言われている
<この脳油は白濁しており脂、というよりもワックスに近い成分。用途としては灯り油や機械油。低温時でも固まらない油は貴重

マッコウクジラ – Wikipedia

>革の昔の鞣し方「油鞣し」で使われる油はこの脳油、ではなくて、皮下脂肪から採った油を使っていた。地域にもよるが鯨やアザラシなど。

織機にも革が使われていた

国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo 2Fは科学技術の歩みで、ここではトヨタ創業者の豊田佐吉氏による織り機が展示されています。

この2Fでは豊田佐吉の開発した織機のモデルも展示されているのですが、写真撮り忘れていましたわ(;・∀・)

理工電子資料館:豊田G型自動織機

この織機は1733年にイギリスでジョン・ケイが (ひ)”wheeled shuttle”というパーツを開発することで大幅な時間短縮となりました。このを受け止めるパーツとして皮が使われていました。
を受け止める柔軟性が必要(木や金属では双方が割れる・欠ける)であり、を押し出すほどの硬さを備えている都合のいい素材」が生皮だったわけです。

この動画の中で左右に高速で動いているのが「杼」であり、これを受け止めand押し出すのがピッカ=生皮だったわけです。ピッカは英語ではピッカーと呼ばれています。革の鞣し工程でピックリングという工程がありますが、この織り機におけるピッカとは無関係。

皮革用語辞典ピックリング

シャトル(杼/ひ)を飛ばす動作のことを「ピッキング(Picking)」といい、それを受け取る人を昔は「ピッカー」と呼んでいた名残

ジョン・ケイ (飛び杼) – Wikipedia

このジョン・ケイはものすごい発明をしたにもかかわらず既存の機織り職人から目の敵にされ逃亡を余儀なくされます。

ラッダイト運動 – Wikipedia
つむぐジェニーと織るジョニ《紡績機と織物機械》

豊田佐吉氏はジョン・ケイの発明から57年後の1890年に「豊田式木製人力織機」を開発。

そして1924(大正13)年に、当時世界最高性能の「無停止杼替式豊田自動織機」を完成させました。織機ではたて糸の上糸と下糸の間によこ糸を通して織物を織っていきますが,よこ糸が無くなった時に自動的に補充し、たて糸が切れた時に自動的に停止する機能を備えた織機を自動織機といいます。

理工電子資料館:豊田G型自動織機

豊田佐吉物語 | 株式会社 豊田自動織機

下記は豊田産業技術記念館で陳列されているものです。下記サムネイルでも見れますが、機械右側のモーターから動力を引っ張るベルトにも革が使われていました。

ヘビの骨から見るヘビ革が天然ものな理由

こちらも1Fに展示されているヘビの骨格標本です。

基本的に革産業は食肉の副産物です。で、皮を革に使う場合は大概肥育されます。(育てて太らせて肉を摂る)。肉が食べられる以上は大概のものは缶詰(瓶詰め・真空パック・パウチetcetc)などの保存食料でも使われます。

以前ヘビは牧場あるのかな?あるならそこで肉をとり、皮もとっているはずだな。その場合は肉を有効活用するために缶詰もあるはずだな、と世界各国の缶詰を一時期本やらネットやらで探していました。が、そのときは結局見つからず。

後日革の専門家に聞いてみたら「ヘビは肥育ないよ。全部革は天然モノだし、肉は肥育牧場あるほど需要がない。ヘビの肉は世界的に見ても精力剤とかゲテモノ食いとして食べられる」とのこと。

なんでですか??

「ヘビって肋骨が多すぎて食用に適さない。育てる手間ひま・屠畜手間ひま考えると割にあわない」とのことでした。骨格標本の見事な肋骨なりを見るととてもよくわかりますな。

皮革講座と工場見学2026 in大阪で専門家が喋ってくれる

さて、来年2026年1月に行われる大阪府皮革業界総合研修の1回目「知っておきたい天然皮革の基礎知識」で喋ってくれる講師は上記のヘビのエピソードを解説してくれたり、牛の胃袋を鞣した人が喋ってくれます。

皮革講座と工場見学2026/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]

1. 知っておきたい天然皮革の基礎知識(1月28日開催)

日時

2026年1月28日(水曜日)17時30分~19時30分

内容

経験豊富な皮革技術者が、天然皮革の基礎知識について、
皮革製品の企画・製造・販売の初心者の方にもわかりやすく説明します。

主な講義内容
・「革の種類と特徴」皮革の歴史を交えて説明します。
・「革の製造コスト」
・「革の良し悪し」
・「こんな革が作れます」様々な種類の革を紹介します。

講師

 元・川村通商株式会社 皮革物資事業部技術顧問 鍛治 雅信 氏
神戸大学農学部畜産学科卒業後、ドイツの化学会社のバイエル(株)に入社。
皮革部に所属し、皮革製造の技術指導で日本全国のタンナーを訪問し、
皮革の本場であるドイツの研修で得た最新処方を紹介。
その後、川村通商(株)に移り、皮革物資事業部で取締役部長として、
植物タンニン剤を中心に皮革用薬品の販売を始め、かわへん(革偏)の物品の販売を統括。
その後、技術顧問としてタンニンその他の技術指導を行う。

帰りは西洋美術館外で彫刻だけ見て

閉館まで見ており、外に出たら真っ暗。国立西洋美術館の外に陳列されているロダンの地獄門を見て帰りましたわ。これがタダで見えるんだから贅沢なものです

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