「パスケース用セル板」についての問い合わせです。 初めてパスケースにこの商品をつけてみようと思っているのですが、 売られているパスケースなどを見ると縫い付けてあるものはほとんどないです が、 これは接着して使うものなのでしょうか?両面テープなどでつけるのでしょう か? 取れる心配はないのでしょうか。 接着剤の場合は何を使えば良いか教えていただけますでしょうか。
という質問が。結構面白いので動画と文章で解説しておきます。
1.動画ではなにをしていたか?
目次
00:01 パスケース用セル板についての問い合わせです。
00:59 しくじり1 両面テープでフィルムを汚さない!
02:12 しくじり2 はみ出ると輝いて目立つ
02:56 しくじり3 貼る時に歪む
03:17 しくじらないために01 汚さない
04:07 余談・型紙の考え方
04:45 真面目に解説すると……
04:58 しくじらないために02 ジグを作る
05:48 余談・なぜ縫わないの?
07:14 両面テープを使い分ける
動画では、パスケース用のセル板をきれいに取り付ける方法を、実際の失敗例を見ながら解説しています。
両面テープがセル板にはみ出して汚れてしまう、セル板そのものが革からはみ出して目立つ、貼り付けるときに革が歪んでしまう、といった「ありがちなしくじり」を紹介。そのうえで、両面テープの貼り方や、抜いた革をジグとして使って位置を決める方法などを実演しています。
後半では、なぜセル板のまわりを縫わないのか、2mm幅と3mm幅の両面テープをどう使い分けているのか、といった仕立て上の考え方についても触れています。
この記事では、その動画で話した内容を振り返りつつ、「なぜ接着剤ではなく両面テープなのか?」など、動画では説明しきれなかった部分を少し補足していきます。
2. でも、なんで接着剤じゃなくて両面テープなんだ?
動画では、セル板の固定に両面テープを使いました。
レザークラフトをやっている人なら、「白ボンドやゴム糊じゃダメなの?」と思うかもしれません。白ボンドやゴム糊でも、まったく接着できないわけではありません。セルシート側の表面を荒らすなどの方法で接着剤が食いつきやい環境は用意できます。
ただ、今回貼り付ける部分は数mm程度。その細い範囲だけをきれいに荒らし、しかも透明部分から傷が見えないように処理して、接着剤まではみ出さないように塗る……となると、かなり面倒です。
ただ、今回セル板を貼る部分は数mm程度しかありません。その細い範囲だけを、表から傷が見えないようにきれいに荒らして、さらに接着剤をはみ出さないように塗る。できなくはないですが……毎回やるとなると、なかなか面倒です。
しかも相手は透明で表面がツルツルしたセル板。接着剤が少しはみ出しただけでも目立ちます。
そこで両面テープです。
今回使っている両面テープは厚さ0.3mm前後。種類によって厚みは違いますが、白ボンドのように乾いて固まるのではなく、粘着層がベタベタした状態のまま貼り付いています。必要な幅だけ貼ればいいので、こうした細い部分の固定には非常に使いやすいわけです。
「でも、両面テープだけで剥がれないの?」と思うかもしれません。
セル板を貼っている部分は、財布の折り目のように何度も大きく曲げ伸ばしする場所ではありません。きちんと貼れていれば、通常の使用で簡単に剥がれてくるものでもありません。
もちろん、端をつまんで「剥がしてやろう」とすれば剥がれます。両面テープですからね(´・ω・`)
ただ、「意図的に剥がせるか」と「普通に使っていて剥がれるか」は別の話です。今回のようなセル板の固定では、手間と仕上がり、必要な接着力を考えると、私は両面テープを使っています。
3. じゃあ、なぜセル板のまわりを縫わないのか?
「両面テープだけだと不安なら、上から縫えばもっと頑丈なんじゃない?」と思うかもしれません。
ただ、セル板を両面テープで貼った上から縫うと、針が粘着層を通ります。粘着層、というのは「べたべたの0.3mmの分厚い層」なわけです。この部分を針や糸が通ると、べたべたになります。ミシンなら針に糊が付いて糸飛びなどの原因になることがありますし、手縫いでも針や糸がベタベタになって、糸を汚してしまうことがあります。
もうひとつの理由が、セル板の硬さです。革なら縫った糸が多少沈み込みますが、セル板は硬いので糸が表面に乗った状態になります。そこへカードを何度も出し入れすると、カードが糸に擦れたり引っ掛かったりして、長く使ううちに糸が傷む可能性があります。
そのため私は、基本的にはセル板のまわりを縫いません。(依頼があれば縫いますがその分工賃あがります、がっつりと)
同じ理由で、セル板自体もカードより少し大きめにしています。カードの端がセル板の端に引っ掛かりにくくして、なるべくスムーズに出し入れできるようにするためです。
4. 2mm幅と3mm・4mm幅の両面テープを使い分ける理由
両面テープは、幅が広いほど接着する面積も増えます。同じ種類のテープなら、2mmより3mm、3mmより4mmの方がしっかり固定しやすい。
だったら全部3mmや4mmでいいじゃないか、となりそうですが、縫製する部分では話が変わります。
たとえば革の端から2.5mmの位置を縫う場合、端から3mm幅の両面テープを貼ってしまうと、針は両面テープの粘着層を貫くことになります。いわば、針と糸が毎回「ベタベタの川」を貫き通すわけです。
これが先ほどの糸飛びや糸汚れにつながります。
そこで縫製する部分では2mm幅。ここでの両面テープは、縫うまでパーツがズレなければいい「仮止め」です。最終的な固定は縫製が担当するので、無理に接着面積を増やす必要はありません。
逆にセル板を固定する部分は、その後に縫わないので両面テープそのものが固定を担当します。こちらは2mmより3mm、スペースが取れるなら4mmと、しっかり接着面積を取ることに意味があります。
たった1mmの違いですが、この1mmで「針がベタベタの川を貫くかどうか」が変わるわけです。
5. それでも縫った方がいい場合はある?
ここまで「私はセル板を縫わない」と書いてきましたが、縫ってはいけないという意味ではありません。
ステッチを入れた見た目が好きだったり、仕立てとして高級感を出したかったり、「どうしても両面テープだけでは不安」という場合には、縫うという選択肢もあります。
その場合、私ならなるべく細い糸を使います。先ほど書いたようにセル板の上では糸が沈まないので、糸が太くなるほどカードが引っ掛かりやすくなるからです。
ちなみに、一昔前のクレジットカードは名前やカード番号が凸状になった、いわゆるエンボス加工のものが多くありました。
あれをパスケースから何度も出し入れすると、出っ張った部分が糸に擦れるんですよね。昔はこうしたカードとの摩擦で糸が傷んでいるものを見ることもありました。
なので、「縫えば絶対に丈夫になる」とも限りません。固定力は上がっても、今度は糸そのものが消耗する場所になります。
何を優先するかで、仕立て方は変わります。
6. 結局、セル板は「両面テープで貼るだけ」なのか?
結局のところ、ケースバイケースです。
今回紹介したやり方は、「これが唯一の正解です」というものではありません。私の場合は、セル板を貼る場所が大きく曲げ伸ばしされる部分ではなく、通常使用なら両面テープで十分持つと考えているため、この方法を選んでいます。
もちろん、剥がそうと思って端から無理やり剥がせば剥がれます。両面テープですからね。
一方で、教室やメーカー、職人によっては「セル板まで縫うのが普通」という考え方もあります。使う材料や作るもの、求める耐久性によっても方法は変わります。
レザークラフトには、「100%このやり方でやりなさい」と決まっていることは案外少ないものです。
私のやり方も、あくまで私がこういう理由で選んでいる方法のひとつです。
AIに聞いた答えでも、教室で習った方法でも、職人から教わった方法でも、Youtuberが行っていたやり方でも「なぜそうするのか」を知ったうえで、自分が使う素材で自分の作りたいものに合う方法を自分で選ばなきゃなりません。
あなたが使う革は何か。厚みは?入れたいカードはどういうの?どの程度強度求める?見た目はどちらが好み?などなど、これらの資料を教えてもらったり、実際に触らないと私たちは何もアドバイスができません。
最終的にはあなた自身が決めてください。まぁ、最初は両面テープが手軽でおすすめですわ( ´∀`)bグッ!
動画で紹介している工具
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