皮革産業連合会の行った「CSR(企業の社会的責任)に係る説明会の開催について | JLIA 日本皮革産業連合会」を見に行ってきました。
皮革産業連合会が日本総合研究所を使って調査したものの結果報告ですな。
3行結論で言うなら。。
・CSRってのは「国内ではなく海外における企業とつきあう社会的責任」 国内外問わず取引先や下請け、材料店がどんな生産しているか知らない!はダメですよ
・CSRトラブル事例集。海外のタンナー現場や欧州はCSRに対してどのような対策をしているか。
・取引先がなにをしているか知りません、というのは今後危ない
セミナー中に書き留めたレポートをダラダラっと書きます。
企業の社会的責任 CSR
国内ではなく海外における企業とつきあう社会的責任、サプライチェーン 取引先管理とは何か?
CSRとは Corporate Social Responsibilityはもともと欧米で産まれた考え方。
日本経団連が提唱する企業行動憲章では「企業は、所得や雇用の創出など経済社会の発展になくてはならない存在であるとともに、社会や環境に与える影響が大きいことを認識し企業の社会的責任=CSRを率先して果たす必要がある」とある。
良好な仕入先との取引推進。
残念ながら明日の商売に直結はしない。が、末永く続いていくためには無駄なことではない。
2014年7月、中国の上海にある肉の加工会社が賞味期限切れの肉を使っていた、という報道がされた。
これを輸入していた大手外食チェーンやコンビニチェーンも影響をうけた。この某大手外食チェーンは決算で100億円の営業損失の見通し。これは01年に上場以来初の決算見通しとなった。
海外の取引先の様子はわからないことも多いが今回起きた事件は外食産業の事件ではあるが多くの日本企業が気にかけて置かなければいけない事件
csrとは法律を守っていただけではいけない、法令遵守だけにはとどまらない企業の社会的責任。
csrが求められる背景
・相次ぐ企業不祥事 企業活動のネガティブインパクト
環境汚染、気候変動、労働問題、人権問題
・企業に対する厳しい目線
市民社会の成熟化(NPO NGOの台頭) 情報革命
(悪い評判の拡散が容易に) 企業活動のグローバル化 発展途上国では政府による取り締まりの限界が出てきている
・情報開示の制度化
「従うか、さもなければ説明せよ」の思想 来年上場企業に対して社外取締役を置くことが望ましい、と法律に入る。置かない場合は株式取締役会で置かない理由を説明しなければいけなくなる。
Response+Abilityの考え方
企業固有の価値創造ストーリーの開示
事例
A社
ベトナム、インドネシアなどに委託先工場。製造プロセスを業務委託している。世界中に委託しているが、そのほとんどが発展途上国。
96年 NGOの調査に端を発し、米国のドキュメンタリー番組の報道を通じて人々に認知され、不買運動に発展。
99年には同社初の減収となった。
実態把握に乗り出し、工場に改善を指導、世の中に情報開示を行った。委託先工場の改善指導。報告書を出し、世界中にある工場の賃金や労働環境などをHPを通じて世界に告示した。
B社
CSRの取り組みが進んでいる先進企業
91年に委託生産時の調達基準を策定していた。
非常に早くからCSRに取り組んでいた。
子どもが働いている現地工場が発覚したら現地に学校を作り、労働年齢になったら再雇用をする。
B社と取引を始めるには調達基準に基づく監査をクリアすることが条件
13年のバングラデシュのビル倒壊事故。縫製工場集約のビル。1万人以上が働いていた。犠牲者が1200人近く。
09年には「複数の事業者が入居するビルでの生産は行わないこと」という調達基準を定めていたのでここでは生産をお願いしていなかった。
先んじた対策が、万が一のリスクを押さえる
C社
04年 アテネオリンピックにあわせてNGOがオリンピックプレイフェアキャンペーンを展開。C社の中国の委託先工場も名指しで指摘される。
C社は実態把握、行動規範策定、監査体制構築を行う。
労働者にヒアリングを実地。時間外労働、最低賃金違反、無給勤務の実態が判明。
委託先向上向け行動規範を策定。
主要委託先180工場を3年で一巡して監査体制を整える。
13年10月21日 朝日新聞が 日本の革靴、汚染の源、という記事を出す。
今後も我が国の皮革産業は発展途上国からの輸入が増えるが、サプライチェーンにおいてどのような課題があるかを知ったうえで発展途上国との取引を進めることが大切です。
インド現地調査より
製革工場の排水処理
一次排水処理設備
裸足に近い状態での就労。健康への影響懸念
視察先は現地の大手企業、欧米顧客との取引あり。
欧米顧客からの監査は年1回。
製品製造工程が中心。
関西は取引先により温度下がる。
児童労働などの実態を把握するのが困難。家族経営が中心。オープンにならない。
欧州皮革産業における取り組み。
1 レザーワーキンググループ
05年にイギリスで設立された製革工程における環境検査を行う国際団体。250社が加盟。環境監査の基準を制定。
監査実地後の証書を発行。
インドでこの監査基準を越えているような会社は上位10社くらい。バングラデシュではまだ超えた会社はない。
2 Tannery of the Year
環境動労の観点から毎年優良な製革事業者を国際的に表彰
我が国皮革産業への提言
発展途上国の皮革産業における問題に敏感になる。アンテナを高く。
自社の取引先の状況や取り組みを把握する
自社のcsr活動を対外的に説明する。
まずは知ることから
質疑応答
新聞におけるCSRの言葉の出現を見ていると07年以降低下している。なぜ?
07年以降株式低下による景気が悪いことが一因ではないか、と。企業の儲けが厳しいとCSRどころではない、という考えではないかな。
定着してきているのでは、と思う。
この言葉が消えることはない、と。
どの業界がもっとも感度が高いか?
BtoC 消費者に直結している業界。小売や食品。大手のイオンやローソンなどは感度が高い。
グローバル化が進んでいるところ。輸送機器、電機製品などの会社。オリンパス、ニコンなどの精密機器は感度が高くみている。
逆に言うならば、、、 倉庫の業界などは感度が低い。荷物預かっていて、というような選択肢が少ない業界では興味を薄くしている。
製品を作っているものとして今後どのように考え方が進んでいるかを個人的な意見も交えて聞きたい。
企業の皆さんに対して大変な時代。格差社会。社会が二分されてきている。
企業はどの社会を相手にするかを考えなきゃいけない。高付加価値で物語を製品につける会社もある。どちらがいい、とは言えない。
世の中が豊かになればなるほど川下が力を持つようになってくる。ものが足りなかった時は作り手サイドがパワーを持っていた。
流通、消費者の意向が強くなる。
流行やクールだ!というきっかけを作れる・仕掛けられるのは流通だけではなく、メーカーの特権でもある。
感想として
面白かったですよ。
今後販売サイドも消費サイドも求めている「ストーリー性」というものに対する一つのネタにはなると思いますわ。
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