【バックナンバーシリーズ】2013年5月17日の記事:動画で見よう!自然なコバ処理とパティーヌ仕上げを可能にするフェニックスコート 


毎週日曜日はブログ、バックナンバーの連載です。

以前のサーバに保存されている昔の記事で、今でも役に立ちそうなものを引っ張って改めて日の目に当てよう!

今日は、発売から9年も経っていますが、未だに店頭でオススメする機会の多い「フェニックスコート」の紹介記事です。この商品がお客様のお役に立てるように改めて載せてみようと思います。
私個人的にも9年経ちますがイチオシです〜。

それでは2013年5月17日の記事
動画で見よう!自然なコバ処理とパティーヌ仕上げを可能にするフェニックスコート 

 

序文:バックナンバーシリーズとは?

Phoenixはここでブログを2014年から書いていますが、実はそのもっと前から他のサーバで書いていました。訳あって現在のサーバへお引越ししましたが、1400ほどあった旧サーバの記事はお引越しできず、そちらのサーバに置きっ放しとなっております。
(旧サーバのブログはこちら

現在でも古いブログはご覧頂けますが、別サーバの記事なのでブログ内検索などでは引っかかりません。

有益な情報がたくさんあって、とってももったいないなー、と日々思っていたので、これから少しずつ【バックナンバー】としてこのブログ用に再編して掲載していこうと思います。

古い記事の引用となりますので、表現が古かったり今ではもっと便利になっていたりしますが、これは当時のまま載せようと思います。

他にも価格が当時と異なっていたり、登場人物がすでにPhoenixを去った人だったりしますが、こちらは誤解を避けるためにも、ご本人への配慮もあり伏字や編集したものとさせていただきます。

予めご了承ください。

 

本文:とっても優等生「Phoenixコートのご紹介」

 

新商品のご案内です。(編集註:※この記事は2013年5月のものです)
フェニックスコート、というもので染料系のコバ処理剤ですが、この品がすごい!ものすごいです。
そりゃもうレザークラフト業界にも革製品にも革命を起こせる品です。

顔料系コバ仕上げ剤と染料ってなにがどう?

従来のコバ処理剤、当店で扱っている各コバ処理剤を整理すると、、

・イリス…イタリア 顔料系 さらっとしており塗りやすいが盛るのは難しい ※取扱終了しました。

 

エッジペイント…イタリア 顔料系 もったりとしており盛りやすいが技術が必要

・カスタム…国産 顔料系。上記2つの中間。 ※取扱終了しました

<編者註:現在は下記のコバ仕上げ材も取り扱っています>

FENICE(フェニーチェ)プロフェッショナルエッジペイント…イタリア 顔料系 中程度の粘性ながら塗りやすく、落ち着いた色目がGOOD!

サーマルコート …カスタムの耐久性を向上させた新商品。中程度の粘性で扱いやすく、値段もお手頃

<註釈終わり>

参考blog
コバ処理どうやるの?カスタム編: レザークラフト・フェニックス

これらに下地として目止め液やサンドナイロンを駆使することでコバ処理を行います。

<編集註:目止め液はメーカー廃盤となり、現在は同等品をメドメールとして販売しています>

 

個人的にはカスタム+エッジペイントの複合技で盛るのも好きです。
(ここらの使い方も説明しなくちゃいけないんですが、、すいません。コバ処理講習では細かく解説しています。)

顔料系、というのは「上にのっぺりと載っかる」と思ってください。
エルメスなどのコバ処理が代表的ですね。

で、顔料系の良さは
・丸く盛ることでこんもりと丸っこく仕上げられる
・革の接合面を隠せる
・色落ちの恐怖がない>剥がれはありえる
・下処理を行うことできれいに出来る

顔料系の悪さは
・技術が必要
・色落ちはないが剥がれる
・のっぺりとした仕上がりになる>タンニン系のナチュラル感とは喧嘩する

という点があります。

で、クラフト染料やWa染料などの染料系でコバ処理をすると”色落ち”の問題が出てきます。
これをカバーするために当店では「染料で仕上げたらカスタム透明などでカバーする」ことをおすすめしています。
もっともカスタム透明にしても「いつかは必ず剥がれる」のでその後に染料の色落ちが生じます。

かように顔料・染料両方に良い点悪い点があります。

さて、前振り終了。

で、染料系コバ仕上げ剤「フェニックスコート」ってどうすごいの?

当店のオイルヌメは全10色あり厚み3mmタンニン仕上げが魅力的な革です。
触ればしっとりとしたオイル感とギュムギュムっとしたタンニン感、両方を感じられる一品です。
<編集註:現在はオイルヌメが廃盤となり、代替としてマスラオがございます>


<画像はマスラオ>

が、この子は芯通しされていません。

(芯通しをするとPH値の値を上げなければならなく、結果的に革のコシの強さが損なわれます。また、乾燥や染料使用量があがることにより値段を上げざるを得なくなります。
お金の問題だけではなく、コシの強さが損なわれるのはタンニン革としてはちょっとな、という点がありますね。イタリアなどはこの点を松脂をいれることで,,,etcetc えぇい、キリが無い!ヽ(`Д´)ノ)

芯通しされていないためコバ処理をしなければならない。でも顔料系でやるとナチュラルタンニンな風合いと一致しない。染料を入れると色落ちが怖い。どうすればいいんだ~!と二律背反アンビバレンツが生じていました。

そこでこの新商品フェニックスコートの登場です☆

このコバ仕上げ剤は染料系ながら色落ちの可能性がほとんどない、という品です。

レストランのメニューカバーやコースターなどの水が生じる場所でのコバ仕上げ剤として開発されたものです。
そのため水による色落ちにとても強くなっています。
(立場上”色落ちしない!”と断言は絶対しません そこらはお察しください(-_-;)


<芯通しされていないコバが、、>

 


<フェニックスコート 焦茶>

 


<フェニックスコート 茶>

当店のオイルヌメに限らずナチュラルタンニン染料仕上げの革にバッチリ!オススメです。

 

さて、それではこの品の弱点は下記のとおりです
・隠蔽力(下地を隠す力)が弱いです=革の接着面は見える
・ムラッ気が出やすいです

が、これらは自然な透明感がメインとなるコバ仕上げ剤である以上当たり前のことです。
ナチュラル感を出したい方には是非お勧めの品です。

さて、こっからが面白くなるパティーヌ仕上げ

フェニックスコートのもう一つの力、パティーヌ仕上げ

フェニックスコートのもう一つの特徴、パティーヌ仕上げ
パティーヌ仕上げとは靴クリームを使うことで靴にムラッ気を出す技法です。
おぼろげな色使い、とでも言うべきものですね。
以前書いたblogで職人さんが作業している風景をちょっと紹介しています。

阪急「メンズ館ナイト」で新喜皮革さんのイベントを見てきた話 3/6: レザークラフト・フェニックス

 

「この技法は靴クリームでやればいいんじゃないのか?鞄だろうがベルトだろうが」

ところがそうもいきません。
靴クリームは必ず色が落ちます。鞄、小物、ベルトに靴クリームを使うと必ず色落ちします。

「じゃぁなんで靴ではこの技法するの?色落ち怖くないの?」

靴で色落ちしても外側ならば影響がありません。
もちろん靴の内側部分は色落ちすると大問題です。靴下が染まりますから。
が、外側は色落ちしても外の世界や地面を汚すくらいです。
靴のヒールなどにも専用の「コバインキ」という染料系仕上げ剤がありますが、これも色落ちします。
靴の世界は「靴外側で色落ちしても服などは汚れない」という認識がある世界です。

「それでもムラッ気を出したかったら染料使うしかないじゃん」

靴クリームが使えないならば染料を使うしかありません。
ですが、染料はヌメ革やタンローじゃないと染まりません。
また、ヌメ革+染料で仕上げたら必ずレザーコートなりをしないと色落ちが起こります。

「ムラ染めをしたいけど靴クリームは色落ちが起こる、染料でやろうとしたらヌメ革やタンローを使わないといけないの?」

従来ならばそうせざるを得ませんでした。

そこでこのフェニックスコートです!

こいつは染料、乾燥が早い、食いつきがいいので革吟面の上に乗ります。
恐ろしいことにクローム革や合成タンニン革にも色がのります。
これはものすごく画期的なことです。

また従来のヌメ革やタンローなどに染めても色落ちの恐怖がかなり少ないです。
(色落ちしない、とは言えない!言えないんですよ!(-_-;))

作業工程を動画で見てみましょう。

 

動画の中でコバを塗る際にはコバフェルト(※廃番品 代替えとしてらくぬ〜りがおすすめ)を使っています。
パティーヌ仕上げをする際には100均で売っている「毛羽立ちの少ないパフ」という化粧道具を使っています。
柔らかな布でポンポンと叩くように塗るのもオススメです。
私自身が色々と試している真っ最中の仕上げ剤ですので「ものごっついこれがオススメ!」的な用法が作れていません。

むら染め・グラデーション仕上げは日本画のぼかしの技法やプラモデルのグラデーション技法が参考になりますね。

「プラモデルのようにエアブラシで使えるの?」

使えません。乾燥が早い仕上げ剤ですのでエアブラシでは詰まります

「買ってきた靴や鞄にも使えるの?」

この仕上げ剤の恐ろしい所はここです。
たとえ製品になった品にも使えます。
「買ってきた革靴を自分の手でパティーヌ仕上げ!」なんてことも可能です。
使う前にクリーナーなどで汚れや皮膜を軽く落としたほうが定着しやすいように思えます。

「色を薄めることは出来るの?」

水で薄められます。水で薄めるとその分乾燥が遅くなります。
乾燥を早いまま・定着強いままで使いたいならばフェニックスコート透明で薄めてください

「フェニックスコート透明ってなんのためにあるの?」
この品は染料の色止めとしても優秀ですのでクラフト染料やWA染料を使った後に色止めとしても使えます。
また、芯通しの革のコバから色落ちを防止する効果もあります。
(つぅか芯通しだからってコバなにもしないとコバから革の染料が色落ちしますよ)

文責;ムラキ

 

 

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