毎週日曜日はブログ、バックナンバーシリーズの日です。
以前のサーバに保存されている昔の記事で、今でも役に立ちそうなものを引っ張って改めて日の目に当てよう!
今週は約11年前の記事です。
最近はいろんなイベントでタンナー(製革所)さんの見学ツアーが行われているようで、以前のように業界のごくごく一部の人しか知らない、というようなこともなくなってきました。
ただ、今日ご紹介する「皮の塩漬け屋さん」については、私もPhoenixに勤めて約10年。日常の業務の一環やレザーソムリエのイベントや革日和などのイベントで姫路や東京のタンナーさんによく行きますが、未だに接点がありません。それくらい表に出ることのない稀有な会社だと思います。
そんな会社に約11年前うちのスタッフが潜入(もちろんアポ有りでね)した記事をあげておりますので、ご紹介いたします。
それではご覧ください!
2011年7月22日の記事
革塩漬けの会社を見てきたよ
※なお、今日の記事では「皮」と「革」を使い分けていますが
・皮…なめしていない状態。そのまま放っておくと腐る
・革…なめし終わった状態。腐らない
という基本情報をお忘れなく!
序文:バックナンバーシリーズとは?
Phoenixはここでブログを2014年から書いていますが、実はそのもっと前から他のサーバで書いていました。訳あって現在のサーバへお引越ししましたが、1400ほどあった旧サーバの記事はお引越しできず、そちらのサーバに置きっ放しとなっております。
(旧サーバのブログはこちら)
現在でも古いブログはご覧頂けますが、別サーバの記事なのでブログ内検索などでは引っかかりません。
有益な情報がたくさんあって、とってももったいないなー、と日々思っていたので、これから少しずつ【バックナンバー】としてこのブログ用に再編して掲載していこうと思います。
古い記事の引用となりますので、表現が古かったり今ではもっと便利になっていたりしますが、これは当時のまま載せようと思います。
他にも価格が当時と異なっていたり、登場人物がすでにPhoenixを去った人だったりしますが、こちらは誤解を避けるためにも、ご本人への配慮もあり伏字や編集したものとさせていただきます。
予めご了承ください。
革業界の黒子的存在、原皮の塩漬け会社さん
色々と縁がありまして皮を塩漬けにする会社を見学してきました。
今回の縁は縦に横に色々と繋がった縁でしたわ、、
※今回のブログでは「皮」と「革」の字を使い分けています。
日本では原皮と呼ばれる塩漬けの皮が海外から輸入されます。
海外で屠畜>塩漬け>タンカーでどんぶらこっこと日本へ>原皮商>タンナーさん>革屋さん>革加工メーカー
という図式です。
では、日本で屠畜された牛の皮はどうなるのでしょうか?
この場合は
日本で屠畜>日本の塩漬け会社さん>タンナーさん>革屋さん>革加工メーカー
という流れ(だと思います。原皮商が入っているのかどうかがちと自信ない)
今回はこの2番目の「塩漬け会社さん」へ見学に行きました。
会社は大阪にあります。
※今回見学の許可とブログ掲載の許可をいただけましたが、普段見学などされていません。
今回はよろしくお願いします。
普段僕らが使うのは北米から輸入した原皮から作れた革が多いのですが、
ここにあるのはすべて国産の牛さんの皮ですか?
「そうですね。
ここから日本のタンナーに行く場合もありますが、アジアに渡る場合も多いですよ」
見ていると男性2人で塩漬けされた原皮をどんどんと積み上げていきます。
「1枚25kg~40kgになりますからねぇ」
25~40!?
重っ!
「塩の分量もありますが、毛も付いていますからねぇ」
あぁ、そうか。
塩漬けされたこの原皮の状態でタンナーに行き、そこでシェービングで毛が取られ、
タンニングされるんでしたものね。
日本の皮は基本的に柔らかく、シボの多い革を作るときによく使われる、とも聞いています。
「確かにそうですが、すべてシボの多い革に使われる、とも限りません。
例えば、日本のタンナーに送られスポーツ会社さんで使われたりもしています。」
先ほど海外に送る、と行っておられましたが、日本の原皮を使うメリットはなんですか?
「焼印がない、ということですね。日本では焼印を使いませんので
革になった時も使いやすいですから」
おぉ、なるほど!
日本のタンナーに送る際にでも塩漬けの必要はあるんですか?
塩漬けしないと腐ります?
「そりゃもちろんです。
でも腐るのを防止、というのと同時に革にした際に血筋が出なくなります」
えっ!
じゃぁ血筋が出ている革ってのは、、、
「塩漬けが足りていませんね。」
「いい革」というのは「タンナーの技術、原皮、両方が揃ってはじめて出来る」
と、店頭で言っているのですが、、、
「あぁ、それはほんとに正しいです。
当社では
1 皮が届いた段階
2 塩漬けして出荷する前
この2つの段階で品質を分けます。
いい品質のものが使われない限り『いい革』、ってのは出来ないと思います。
悪い品質、というものでもちゃんとそれはそれで需要があり、ちゃんと鞣されますよ。
動物から頂いたものですから余すことなく使わなくちゃいけませんよね。」
いや、ごもっともですな。
「知っています?塩漬けされた革はですね、徐々に赤くなるんですよ」
それは塩が血を吸収しているってことですかい?
「いえいえ。
革の好塩菌(コウエンキン)の作用により徐々に赤くなるんですよ。
この赤い状態か、その手前くらいでタンナーに出荷されます。
塩漬けし過ぎると赤紫になってしまいますね。
海外に輸出される際はこの赤くなる時間も計算しつつ出荷します」
以前米沢牛の革ってのを見た事あるんですが、米沢牛だからいい、というわけでも
ないんですよね?
「そうですね。
日本はサシを好みますから牛を太らせてしまいます。
そうなるとやはり革にしたとき締りがなくなります。
が、逆にシボの多い革の場合はそういう皮のほうが作り易いですね。
当社では神戸の牛皮を使ったりしますが、神戸の牛はちょっと小ぶりです。
200DSよりちょい小さいくらいです。」
ほへ~
面白いなぁ
ギュムっと締めてどんどんと積み上げていきます。
会社の中ではフォークリフトがどんどんとパレットに積まれた原皮を
運んでいきます。
「もうちょっとあとの時間でしたら塩漬けの工程も見せてあげられるんですけどねぇ」
いえいえ、次も来ますから!その時じっくりと!
今回は短い時間で話を聞かせてもらいました。
ここ数年でタンナーは色々と雑誌で取り上げられるようにもなりましたが、
その前段階ではこのような会社の手助けがあります。
『いい革』は『いい原皮』と『いいタンナーの技術』が揃ってはじめて出来上がります。
『いい原皮』とは牛の段階で『良い皮』、というのもありますが、
この塩漬けに技術と品質管理の目があり、『いい原皮』ができます。
いや、面白い見学でした☆
(おもしろすぎて写真を全然撮れていませんでした。
次回リベンジリベンジ)
過去の関連blog:
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- 【続報】Phoenix、ブルやるってよ
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