奈良のNPO法人 書物の歴史と保存修復に関する研究会さんは製本技術のNPOさんです。
各図書館などから本の修復を依頼されてお金をもらってきちんと直す。
欧州にまで修復製本技術を学びに行き、それを日本で講習する、ということも行っています。
過去においては欧州まで行って羊皮紙を皮から作ったり、なども行っています。
(なんと羨ましい!)
NPO法人 書物の歴史と保存修復に関する研究会 レポート パーチメント講座を受講して
フェニックスに革を買いに来られたり、革の説明講座に呼ばれたり、もともと私が書店で働いていた書痴なので話があったり、という御縁で今回「漉き機を教えてほしい」という依頼が。
製本の漉き、というのはちょっと特殊です。
製本用の漉きの話をしてみよう: レザークラフト・フェニックス
「ヘリ漉き幅20mmで肉とり」というひじょ~~~~~にめんどくさい漉きを手作業でやる業界、それが製本業界です。
この業界の恐ろしいところはこの手間のかかる漉きを「手でやりましょう♪」、と書かれているところです。
製本の本を70年代から現代までひと通り目を通していますが、どれにも「漉き機を使いましょう!」なんて記述はありません。
それどころか漉き機の存在すら書かれていません。こんな面白い機械なのになぁ
普段は「漉き講座をマンツーマンでやるから私のところまで来てね」と言っているのですが、「出張費用払うから来てくれない?」 ん~、、、それじゃ出張費用でこれだけちょうだい>okということでテクテクと奈良県まで行ってきました。
書物の歴史修復に関する研究会ってどんなところ?
マンションの一室でやってはるんですか?
「人が増えているので講座用に別の場所を借りています。教室スペースと工房スペースを分けていますね。
今回来て頂いているこの場所は工房スペースですね」
女性ばかり?
「食べていけるわけじゃないですから結果的に女性が多いですね。
この技術だけで食べていくのは難しいですから男性の方はなかなかいないですね。」
あぁ、人様の本棚を見る喜び。
製本用の本も多いですが、紙関係もありますね。洋書まであるのはさすがですねぇ。
修復ってのは需要があるものなんですか?
「和本の修復技術を行うところは存在します。
でも洋書は明治時代に日本にやってきてまだ150年ですから日本では歴史が浅いです。
各図書館には必ず修復室が併設されており、専門技術者が少なくとも1名は常駐する、と言う欧米の状況に比べて、日本では人手不足極まれりです。
製本趣味は日本でも70年台から何度もブームが来ています。
ですが、イギリスの著名な製本修復家バ-ナ-ド・ミドルトンは彼の著書『革製本の修復』(The Restoration of Leather Bindings )の中でこのようなことを言っています。
「有能な製本家かならずしも有能な修復家にあらず」と。
実際、ヨ-ロッパにおいても、初期の書物の、形態や素材についての知識のなさからくる書物の破壊の例が数多く指摘されています。
現在日本ではその技術者や専門員の数は圧倒的に足りません
。 そのような状況の中、特に営利を目的としない中立的第三者機関によるコンサルティング、技術指導、 技術者の養成などの必要性が高まっています。
このNPOを設立し、上記の活動を行っていくことは、時代のニーズに即したことであり、社会貢献への果 たす役割は大きいに違いありません。」
NPO法人 書物の歴史と保存修復に関する研究会 設立趣旨より
じゃぁこのNPOでは技術講習だけではなく、修復の依頼も受けて行うんですか?
「講習会も行っていますし、図書館からの修復依頼も受けています。
NPO法人 書物の歴史と保存修復に関する研究会 裏打ち講習会 2009.10.10
NPO法人 書物の歴史と保存修復に関する研究会 被災資料クリーニングボランティア
今の季節はちょっと手が空いているのでこの間に技術講習などを行います」
責任重大ね( ;´Д`)
ってことで2時間半ほどの漉き機講習。
ん?やけにきれいね、この漉き機
「あまり頻繁にも使っていなかったんですよ」
!!なんともったいない。
まぁ私も漉き機触っていて楽しい、と思うのに4年かかったからなぁ。
・漉き機の原理
・構造
・ケガやトラブルのケース
・基本的な漉き方
これに加えて
・製本用の漉きをするにはどうするか
などまで叩き込み。最終的には
「私が1日かかってやっていた漉きが2分で((((;゚Д゚))))」
と感動してもらえましたわ
NPO法人 書物の歴史と保存修復に関する研究会さんは修復の技術を学び活かしたい、という方ならば面白い場所かと思います。
興味ある方は下記HPからお問合せください。
「フェニックスさんのblog見た」と言えば向こうさんも話が伝わりやすいかと思います
過去の関連blog:
- 漉き機で有名なニッピ機械工場へ見学に行ってきた
- A4の0.5mm薄漉きはプロでも難しいから切り売りの革のほうがオススメ、という話
- 他社で購入した革を漉いてもらいたい、という場合のいろいろなケースを解説
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