こんにちは。横井でございます。
先日、お客様からいただいたお問い合わせで、
結果として「あ、もしかしたらこれ使えるんじゃね?」となった話を紹介します。
タイトルの通り、協進エル社さんのセルシートA4判が芯材として便利がいい、という話です。
目次
そもそも芯材ってなんじゃ?
芯材とは、表地と裏地の間に挟んで使う、通常は見えないところに使う素材の総称です。
その目的は補強であったり、形出しであったり、軽量化のためのものであったりします。
ただ極論として、目に見えないところに使うから何を使ってもOKです。
「芯材」と名のつくものにこだわる必要がないわけで、
以前、芯材についてはこちらのブログで取り上げておりますが
めちゃくちゃ要約すると「足りないものを補う素材」という考え方が可能です。
特にうちに多い問い合わせで
「1ミリに漉いても強度がある革が欲しい」
「なるべく軽く、けど見た目はしっかりしたカバンを作りたい」
「自立するには何ミリに漉けば良いか」
などは、芯材を使えればクリアできる問題です。
ただ、芯材に関しては教本で説明されている機会がすごく少ないです。
おそらく、応用のバリエーションが多くて紹介しにくいのだと思います。
そこで、先にあげた用例を元に順に説明していこうと思います。
持ち手の付け根にやるとグッと長持ち、補強芯
「1ミリに漉いても強度がある革が欲しい」の解決法
一番最初に紹介するのが補強芯です。
革は所詮は繊維の集合体ですので伸びるし、切り込みが入っていると裂けやすかったり、薄いと千切れたりします。これはもう素材としての宿命だと思います。
でもせっかく作った手作りバッグ、長く使いたいですよね。
そんな時には補強芯を使ってみてください。
補強芯でパッと思いつくのがセラフィーニテープです。
テープという名前ですがれっきとした芯材です。
上記ブログリンクにもあるように、このテープは手で千切ろうと思っても切れません。
補強したい部分に貼って、革を縫う際に一緒に縫ってあげれば
たちまちに伸びにくい、千切れにくい仕上がりとなります。
セラフィーニテープのほか、のり付きスライサーなんかも補強としては有用な芯材ですね。
重たい革カバンは嫌だ!という方に向けた軽量化のための芯材
「なるべく軽く、けど見た目はしっかりしたカバンを作りたい」の解決法
これはもうどうしようもないことですが。革の鞄は相対的に重たいです。
世の中には様々な素材が存在し、ナイロンやビニール(合皮)なんかは日々進化し、
軽くて、強くて、色も豊富で、と
革よりも優れた特性を付与された素材がゴマンとあります。
逆にいうと、革は素材感や風合いでは唯一無二でも、弱点も多いというわけで。
(こんな書き方したらいろんな人に怒られる気がしますが・・・)
けれども先にあげた補強芯もそうですが、工夫を凝らすことで、
弱点を補うことができ、軽量化することも可能です。
その役に立つのが芯材です。
例えば、ここに2mm厚の革があります。
1DSあたりの重さが16.55gですね。
これを1.4mmに漉きます。
その裏に芯材、バイリーンの0.6mmを貼ります
使う接着剤はEcho P 208
貼り合わせるとこんな感じで2層になります。
裏面は床っぽいですね。
接着後の厚みは元と同じ2.0mm
で、重さを測ると…
11.66g!
なんと約5gの軽量化に成功です!
5gと侮ることなかれ、約30パーセントの軽量化に成功です!
ただし、芯材を使う=裏地で隠す が必要なので、
あくまで裏地を使うことが前提です。
今日の本題、セルシートA4判は形出し芯材として優秀というお話
「自立するには何ミリに漉けば良いか」の解決法 〜漉くよりも芯材を使おう!
で、次にご紹介するのがタイトルのセルシートA4判です。
先日、お客様と電話でやりとりしていた際に、芯材を使いなはれ、という話だったのですが
その時に、「そしたら横井さん、手元にあるセルシートを芯材として使っていいですか?」となりまして、
それはすごく良いアイデアだと思い今日のブログに至ったわけです。
お手元にセルシートを余らせている方は是非ご参考に。
先ほど以前にあげたブログでも紹介されていましたが、
「作るものを自立させたい」場合、芯材がとっても有用です。
前述の「形出し」の役割というわけです。
Phoenixではボンテックスという堅い紙を芯材として販売しておりますが、
紙なので雨や湿気に弱い弱点があります。
そこで飛び出したのがセルシートを芯材として使うという裏技でした。
芯材に抵抗があるって方も一定数おられるとは思うのですが、
芯材を使う方が手っ取り早いし確実です。
革は所詮革ですから、使っていくうちに柔らかくなりますし、
最初は自立していても使っていくうちに「くたっ」としてしまいます。
なので、見えない部分に革じゃないもので補強してあげれば良いじゃないというわけです。
ではこちらをご覧ください。
うちの「くたっと革」代表のピッグスエードです。
表裏貼り合わせてもご覧の通り、「くたっと」しております。
で、この「くたっと感」を「シャキッと感」に変えるべく、
表と裏の間にセルシートを挟み込みます
コバにセルシートが出ない程度に一回り小さく切って貼ります。
真ん中を少しだけ両面テープで貼ってます。
後からぐるり四方を革同士で貼り合わせるのでこの程度の固定で十分です。
あとでステッチを走らす際にもこのように一回り切っておいた方が便利がいいです
で、接着すると
「クララ ピッグスエードが立ったー!」
厚みは少し出ましたが、セルシート自体が0.3mmですのでほとんど気にならないレベルです。
今回、セルシートを使ったのは
・A4版で販売されているので保管に便利
・0.3mmと薄いけども硬さがしっかりある
・本来のセルシートとしても使える利便性の良さ
・Phoenixで買える
という点がちょうど良かったわけで、
実は代用品として「クリアファイル」も使えます。
クリアファイルの方が少し薄くて柔らかいですが、切って芯材にしても問題なしです
このように、「芯材」として販売されていなくても、
どうせ表裏の間に挟まれて見えなくなる部分ですので、
何を使ってもOKなわけです。
セルシートはその好例だと思います。
芯材を使いこなせると鬼に金棒
まとめます。
かつて、私が鞄メーカで働いてた時に上司から
「カバン作るのと芯材を学ぶのは同意だ」と言われました。
外見ももちろん大事ですが、それを支える中身も大事だと思います。
外見だけで事足りるのであればそれはそれで頼もしい限りですが、
さりげなく中身で活躍する芯材も同じくらい大切かな、と思います。
ですので、皆さんも困った時は「芯材」を選択肢に加えてもらえると、
もしかしたらすんなり解決できることかもしれません。
Let’s 芯材!
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