印伝革ってどういうもの?いつからあったの?という質問から江戸時代の本がキンドルで読める、という話まで


先生質問です₍₍ ◝(●˙꒳˙●)◜ ₎₎

印伝革って歴史古いんですか?
今日接客で革のこと話してたんですが、歴史的には聖武天皇の靴とかで日本は革作りしてたのは知ってて、近代の革作りは明治期に伝わってきた(ニッピ)も話せるんですが(アイヌはあんまり知らないので割愛)、話してるうちにそういや印伝って古そうだけどいつ頃からなんだろう、と疑問に思いまして。
教えて村木さん

お客さんからこのレベルの質問があったら気が向いたら答えます。
お金もらったら真面目に答えます。今回は社内からの質問だったので答えますが、blogのネタにさせてもらいましょう。

今回の話は「えっ!江戸時代の書籍が今キンドルで買えるの!?装剣奇賞の講座が大阪で9月にやっていたのか!?」など違う方向に飛んでいきます。印伝の歴史などは下記冒頭5行で終わりますが、そこから過去の書物ひっくり返して江戸時代まで飛びます。

ネットなりai先生に聞いてみたら?

印伝、歴史、で調べると、、、

歴史 | 印伝の世界 | 印傳屋 | INDEN-YA
甲州印伝 印傳屋上原勇七 池田屋楽天市場店

甲州印伝・漆でのせる文様と想い/やまなしの美技

まぁ、色々ありますが、上記、、、というかネットにある印伝の記述って「甲州印伝」の記述となります。印伝、と甲州印伝ではちょっと意味合いが違うわけで。

甲州印伝は上記にあるように「甲州印傳は今から400年ほど前、遠祖・上原勇七が鹿革に漆で柄付けする独特の方法を考案したのが始まりだと言われています。」とあります。鹿革に漆を使った独特の技法で作られたものが甲州印伝、となります。ですが、これは「印伝」の説明となりません。

作り方や説明としては下記が山梨県のサイトなだけあってある意味中立的に書かれています。

甲州印伝・漆でのせる文様と想い/やまなしの美技

で調べると

10年以上集めているネット・論文・雑誌・本を電子化してOCRかけているのでそれをひっくり返すと、、、つぅか竹之内先生ほんとにすげぇな( ´Д`)=3

浅草の東京都立皮革技術センターが刊行している季刊誌「かわとはきもの」は結構な冊数がPDFで公開されており検索できるようになっています。で、ここで歴史的なものを書いてくださっているのが元北海道大学農学研究科 竹之内一昭先生。革の歴史的なことを調べると大概この人の論文がヒットします。

近世アジアの皮革 6.日本の皮革貿易

中世アジアの皮革 3.日本

装剣奇賞という本があって、、、って、これキンドルで売られているのか!?

装剣奇賞という本は革の歴史や過去の輸入革調べるとぶち当たる本です。

天明元年(一七八一)に大坂で出版された『装剣奇賞』は初の本格的な細密工芸の作家名鑑として、刀装具や根付研究に今なお大きな影響を与えているが、

『装剣奇賞』の成立と展開についてより

基本的に刀装具と根付における工芸作家図鑑でしかないのですが、後半に20ページほど当時の輸入革に関する記述が載っています。

今回久々に検索すると。。。げ、今年9月に装剣奇賞に関する講座あったのかぁ。。でも刀剣に関することで革に関する説明などないだろうなぁ

令和5年度なにわ歴博講座「『装剣奇賞』の世界―江戸時代の刀装具と根付―」

は!?古書価格5万くらいが1000円で買えるの、今!?

活字版 装剣奇賞 全 | 稲葉通竜 | 軍事 | Kindleストア | Amazon

はぁ!?2017年からアマゾン・キンドルになっていたのか!?検索する単語じゃなかったのでさっぱり知らなかった。。これも刀剣乱舞のおかげか!なんとありがたい

で、ワクワクと購入。きちんと上記記述を確認。あぁぁぁ!!!やっぱり原本をあたると違う発見があるなぁ

装剣奇賞によると印伝、とは「インドから伝来してきた革=印伝」という大きな括り方

印伝は、「こういう作り方があって、それに基づいた革です」「定義がこうきっちりしています!」というわけではなくて。

・インドの地名がついている輸入革
応帝亜(印度亜)=インデヤ
莫臥爾=モウル
聖多黙=サントメ
榜葛刺革=ベンガラ
呂宋革=ルソン

ルソンはフィリピンあたりですが、ほかはインド地方の地名。

定義としてはこれらの名前がついている革は印度伝来の革=印伝、なわけです。

革の色や技法、彩色なども様々。

ポテトチップス、というくらいに大きな括り方の単語なわけです。

甲州印伝はあくまで「印伝」を模した革

で、輸入革を真似して作られたのが甲州印伝。甲州印伝としては本来は「脳漿鞣し」「燻べ」で「漆で彩色」したもの。こちらは定義がきっちりしています。

印伝、と甲州印伝、では意味合いがまるで異なるわけです。

現状で印伝、と名乗ろうと思うとどうすればいいか?

インドで作った革ならば「印伝」と名乗ってもある意味嘘ではないですねヽ(・ω・)/ 「鹿の革で柔らかな風合い」などを印伝、と称するのはちょっと乱暴ですな。

これ読んだ人が「印伝って明確な定義ないのか!じゃぁ好き勝手やろう!印伝って革でもイメージよくて儲かりそうやん!」と「言葉」だけ使って消費者に錯誤を与えるような商売は可能といや可能だよね。
「印伝と名乗っているから漆と鹿革使っていると思った?でも残念!それは言葉だけに騙されましたね!」的なことは美しくない商行為だな、とは思います。

「甲州印伝」はきちんと商標なり取っていますね。

伝統工芸の技を活かす事業・知財戦略の確立 | 窓口支援事例 | 知財総合支援窓口 知財ポータル (中小企業を無料で支援します)
アイデア・出願・事業展開・海外展開 etc 無料でアドバイス 知財支援はINPITにおまかせ! 有限会社 印傳の山本 特許庁 広報誌「とっきょ」2022年10月11日発行号 | 経済産業省 特許庁

おや、2022年なら最近だな。ちょっとここらの話を聞いたら面白そうですね。

繰り返しますが、印伝、という革自体に明確な定義づけはないです。商標も「印伝」では取れないでしょうね。何かプラスアルファして「~~印伝」と名乗れば取れるっぽいですな。

活動報告|日本鹿皮革開発協議会 ニホンシカ革を初めて使った「日本鹿カルタン印傳」が商標登録

 

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