少し前に別のところでミニカシメ 用の打ち棒を購入しました。打ってみるとカーブの周りが大きく、カシメの周りの革に輪の跡がついてしまいました。そこでフェニックスさんの「カーブに合わせて作ってあります」というミニカシメ打ち棒を購入しました。見た目は初めのものと違い、いい感じですが、打ってみるとやはり革の周りに丸い跡がつきます。これは内棒の縁を自分で削る加工をしないとうまくいかないものなのでしょうか?試してみてください。よろしくお願いいたします。
で、このケースですがいくつも考えられる要素があります。
おそらくですが「手で打つ打ち棒の限界だけど、技術でカバー出来ます。でもハンドプレス+駒でやるのが最高です」が回答となります。
上記の質問に対して考えられる要素が多数存在しますので順番に可能性を潰していきます。
目次
ミニカシメ本体はどこで買ったか?
当社で打っている打ち棒は当社で売っているカシメに最適化されています。
ですので、当社の打ち棒は当社以外で購入したミニカシメをきっちり留められます!と断言が出来ないです。東京と大阪で売っているカシメも微妙にカーブが異なるものもある、と聞いています。
ミニカシメ – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
打つ工具と土台はどう?
叩く工具=木槌も重要です。あ、金槌はおすすめしづらいです。めちゃくちゃ打ちやすいのですが、打ち棒を徐々に痛めていきます。金槌が強すぎて打ち棒が歪んでくるんですよ。
木槌なり樹脂ハンマーでしたら数年に一度買い替えたら良いだけですので。
1500円程度の投資で効率が3倍良くなるのが実感出来る太鼓木槌 | phoenix blog
木槌 – レザークラフトフェニックス ONLINE SHOP 買うなら特大がオススメです。小も軽くて悪くはないです。
で。土台。これが重要。
机の上で作業するならば机の足の上でやったほうが力が逃げません。さらには下記blogでも解説している土台があると反発力が強くなり失敗率も減ります。
動画で見よう!音と振動対策:ケヤキの塊を足の上に | phoenix blog
土台が弱いとこんにゃくの上で作業している&試してわかる価値の話 | phoenix blog
使っている革と足の長さはきっちりとあっているか?
革の厚みとカシメの足の長さがきっちりあっているかも重要です。
カシメの足の長さはなぜ違うのか?という実例 | phoenix blog
さらに、革がタンニン系の硬めの革だと跡が残りやすくなります。
そこまでやっていても手で叩くと叩きすぎる
「上記もきちんとやった!それでも跡が残る!」という場合ですが、ぶっちゃけ手でやると跡が残りやすいです。
ぢつは打ち棒、というのはカシメの頭よりほんの少し、、、0.8mmほど大きめに作られています。
イラストで書きましたがこんな感じ。ボールペンの先っぽが大きめに作られている部分です。これが0.8mmほどでかい部分。この出っ張りが打つ際に「ミニカシメがズレないようにカポッとはめるよ」という部分。でも、手で叩くとこの部分がガツン!と革に衝撃を与えて跡が残ります。
じゃぁ下記の図のようにギリギリまで打ち棒の端っこを削ってあったら跡は残らないの?
>残らないですね。ただし、打つ際に角度が2度でもズレると打ち棒の端っこがカシメの頭にあたってしまいカシメの頭に傷が残ります。
あともし削りたい!と思った際は、自分で削るよりも旋盤工に頼むのがお勧め。手作業では難しいです。
一応裏メニューとして当社が旋盤工にお願いする、というのも可能なのですが駒にせよ打ち棒にせよ数千円はかかります。それでもいいのでお願い!という場合は社員仲地なり森なりに相談してみてください。ケースバイケースですがご相談には応じますので。
打ち棒製作メーカーとしては「まったくズレないように手で打つなんて不可能だろ?どうせ失敗するなら革に跡が残ってもいいから失敗しづらい打ち棒を作ろう」と考えたわけです。
打ち駒+ハンドプレスが最強なわけ
「購入後に『早く買っておけばよかった!』と思った工具ってなに?」ランキングをしたところ1位はハンドプレスでした。それくらい失敗が減ります。
ハンドプレス – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
で、ここでは「なぜ打ち駒+ハンドプレスが最強なのか」を解説してみましょう。
現在発売中のフェニックスの小カシメ打ち棒と駒
下記写真は小カシメ打ち棒です。ボールペンの先が「小カシメをカポッとはめるための出っ張り」ですね。この出っ張りがあるからこそ、手で打っても失敗しづらいわけです。その分革に跡が残ります。
カシメ用打棒 – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
それに対して小カシメ駒ですが、出っ張りが存在しません。
ハンドプレスは「必ず垂直に打ち付ける」事ができるため、出っ張り部分を排除しているわけですね。「垂直に打てるならばそうそう失敗しないでしょ?それじゃ出っ張りいらないよね」ということです。
両面カシメ用打駒 – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
ちょっと特殊な事例:旧型大カシメ駒
じゃぁ、どんなハンドプレスの打ち駒も最強なのか、というと、モノによっては下記のように出っ張りが存在しています。下記のボールペンの先っぽ部分ですね。
あ、この駒は私個人所有のもので旧型の駒です。中に磁石内蔵されているので使いやすいです。ただし、磁石内臓のために出っ張り部分が大きめになる、という欠点があります。これはちょっと事例として特殊です。フェニックスで売っている駒は現状このタイプはありません。そういや最近見ないな、このタイプ
ハンドプレスの駒を使っているのに革に跡が残る!というトラブル: レザークラフト・フェニックス げ、このblog.2013年か。。)
打ち棒と駒によるカシメサンプルを見て解説
で、下記は金具店頭担当:仲地が作ってくれたサンプルです。
左端から「打ち棒+手」「ハンドプレス+駒」「ハンドプレス+ベタ駒」です。
ベタ駒は円盤駒の小型バージョンで「カシメを平らに潰す」という特殊な打ち方です。
ベタ駒 – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
直径50mm円盤型駒 – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
左端は手で打ったために跡が残っている。でもハンドプレスは残っていません。さてなぜか??
手で打つと勢いがついているためガツン!と行く。ハンドプレスはじんわりと行くので跡がつきづらい
打ち棒はどうしても手で打つため微調整が難しいです。木槌で「ガツン!ガツン!と勢いよく!叩く」わけですから微調整など難しいわけです。
それに対してハンドプレスだと「力強くジンワリ」と押さえつけていくため衝撃が革に残りづらいわけです。ハンドプレスでも「ひたすらギュューーーーーーーーーーっと押し付ける」ように使うと跡はつきます。ですがハンドプレスを一度使うと「あっ!いまクッと感触があった!これがカシメがしっかりと留まった瞬間だな!」というのが感覚でわかります。この感覚がつかめるとハンドプレスでは跡が残りづらくなります。
打ち棒を手で打つ場合は強くガツン!ガツン!ではなく「恐る恐るコンコンコンココンコン!」と叩いていき「どれくらいの力で叩いたら跡が残るかor残らないか」を手で体得していくしかありませんね。
ハンドプレス、ほんとに偉大。でも高いよね!
「ハンドプレス高いやん?将来的に買いたいけど、今はまだ、、」という人には「駒を装着できるセッタースイッチを購入してカシメの駒を使う」というのも手です。ただし、打つ際に少しでも角度が狂うと失敗します、確実に。でも跡はつきづらいですので、そこらは腕を磨きましょう。
セッタースイッチ(コマ用打ち棒・コマ用土台) – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
ハンドプレスの駒を手で打つ美しい工具があるんだけど、早めに買っておいたほうが良い、多分、という話 | phoenix blog
個人的には「ハンドプレスって高いじゃん?だから打ち棒買うんだよ!」という人にも「打ち棒を今後購入するのはやめてセッタースイッチと打ち駒にしておいたほうが後々得するよ」とオススメしています。
どうせ、いつかはハンドプレス買いますよ。そのときに打ち棒たくさん買っていると「げ、打ち棒と別に駒を買い替えかよ!打ち棒もったいないなぁ。だからハンドプレス導入やめようかなぁ」と思います。それならばセッタースイッチ買って打ち駒を打ち棒として運用するほうがお勧め。
打ち棒ではなくて、駒が中心のクラフトを始めると、打ち棒とは違うメリットもあります。
駒を買うと上駒がきっちりと合う以外に下駒がきっちりと合うってのが素晴らしいです。
オールマイティープレートはオールマイティーだから駄目なんです。ここらも上記blogで解説しています。
ハンドプレス・打駒 – ヌメ革と真鍮金具とレザークラフト材料の通販-フェニックス
・過去の相談事例。当社以外のホックを当社の打ち棒や駒で打ってもキレイに打てないよ、という話し
《金具》謎のジャンパードットホックがつけられない>>ホックボタンに関する驚く話: レザークラフト・フェニックス
・読むと「ハンドプレス欲しいかも、、」と洗脳させるたちの悪いblog
ホックがうまく打てない、という場合はハンドプレス買わなきゃいけないのか、と絶望して希望を見出す話 | phoenix blog
過去の関連blog:
- カシメの足の長さはなぜ違うのか?という実例
- ベゼルコンチョや飾りカシメがきれいに打てないな、という質問
- ホックがうまく打てない、という場合はハンドプレス買わなきゃいけないのか、と絶望して希望を見出す話
- 動画で見よう!職人も鞄や靴メーカーも知らない平べったいハンドプレス駒「ベタ駒」
- 《道具》ハンドプレスが値上がりします。