エンタメで見る革の話:もののけ姫で見られる鞴(ふいご)の話から鞴神社の話へ。 | phoenix blog
前回はもののけ姫の世界の説明と鞴、鞴神社の解説でした。 で、鞴(ふいご)の種類と作り方の話。
もののけ姫で使われていたフイゴだけど、踏んでいるだけだよ?
日本のフイゴにも色々と歴史があります。
最古の鞴・天羽鞴
日本書紀にも載っている最古の鞴・天羽鞴(あまのはぶき)は形状がわかっていません。ですが、下記の奈良文化財研究所blogでは「おそらくこれじゃないかな」と推測され、更に実際に作り、facebookに動画まであげてくれています。ありがたやありがたや
なるほど、手足や腹部分なりを縛って袋状にしたんだなぁ、と。
で、以前も紹介したDr.stone。
3巻103ページから引用ですが、上記サイトと似ているが微妙に違う。吸気口部分を大きくしていますな。
が、天羽鞴にせよ、この鞴にせよ、手を使い上半身を使う運動となるため、効率がいまいち良くない。
鞴の種類
下記サイトを見ると他の鞴の種類が見られます。
「たたら」の発祥と発展 – 「たたら」とは – 鉄の道文化圏
踏鞴 「たたらを踏む」という言葉のもとになった鞴で、板を踏むことで上下運動により風を送る仕組みの鞴。
吹差鞴 手押し式の鞴。箱の形をしていて、気密性が高く、柄を押しても引いても送風でき、始まりは鎌倉初期~中期で、普及したのは15世紀以降。奥羽地方では大型の吹差鞴を「大伝馬」ともいう。
天秤鞴 中国地方で発達・普及。発明は元禄年間。
水車鞴 鞴を動かす労働の過酷さによる番子不足を、動力に水車を利用することで解決した鞴。奥羽地方で発明され広く実用化。
・さらに、国立国会図書館では日本山海名物図解がデジタルで閲覧可能!すごい時代だ。
日本山海名物図会 5巻. [2] – 国立国会図書館デジタルコレクション
多分左が吹刺鞴。箱になっており押しても引いても風が送れる
で、下はおそらく踏鞴。
で下記のもののけ姫。てっきり天秤鞴かと思っていたが踏鞴ですね、これ。
日本の鞴の変遷から見る「体の利用」と「効率性の追求」
最初の天羽鞴は「手と上半身」利用で大きさが小さく、効率が悪い。送れる風の量が少ない。
吹刺鞴になることで「手と上半身と下半身」利用で、大きさが大きい。結果的に風を送る量が多い。
で、踏鞴になることで「下半身主体。手はツナを握ることで体を安定させるために使う」。さらに、大型化することで1人ではなく、複数人で利用が可能。結果的に送れる風の量が多い。
最後の天秤鞴は、踏鞴の大型化・多人数化から効率を追求し、天秤=シーソー構造にすることで、省スペース、かつ、効率化が図られた画期的なものでした。
鉄の需要が増えるにつれ、生産量を上げるために大型化した炉には、一層勢いよく空気を送り込み、炉内の温度を高める装置が不可欠です。そこで、たたら製鉄においては足踏み式の鞴が用いられてきましたが、この踏鞴にさらに改良を加えたものが天秤鞴です。天秤鞴は両足で左右それぞれの鞴を交互に踏むもので、片方を踏むともう一方が上がる、いわばシーソーのような構造が特徴です。この天秤鞴の導入により、生産効率は飛躍的に向上したと考えられています。
「たたら」の発祥と発展 – 「たたら」とは – 鉄の道文化圏
フイゴはどう作る?
踏鞴なり天秤鞴はともかくとして、、、西洋の鞴はyoutubeで作り方が学べます。すごい時代だな。。
下記では羊革を使っています。
こちらは使っているのはカーフ(生後6ヶ月未満の牛の革)を使います。
鞴になぜ革を使う?
さて、革編に備える、と書いて「鞴(ふいご)」ですが、なぜ布じゃ駄目なんでしょうか?
これは革の繊維の絡み方が理由です。
布は基本的に織りで作られます。縦糸と横糸が絡み合って出来ます。
他方、革は繊維がランダムに縦横無尽に絡み合っています。
そのため、布などに比べて空気の漏れが少ないわけですね。柔らかく柔軟性があるのに、空気は漏れづらい。これが鞴という工具の素材としてぴったりだったわけです。
(和紙でもイケルと思うが、長期間の耐久性に難があるからなぁ)
過去の関連blog:
- エンタメで見る革の話:もののけ姫で見られる鞴(ふいご)の話から鞴神社の話へ。
- エンタメの革の話をしよう!:Dr.STONEで見る魚の革の話。アイヌ民族の鮭皮衣や姫路白鞣しの話
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