エンターテイメントの革の話をしよう!:龍の皮を鞣して革にする、という漫画 ヴィーヴル洋裁店


漫画小説映画問わず、エンタメの世界での革の話。
別に革素材に拘ることもなく、靴鞄や革作家さんがどう生きるか、という話まで取り扱うつもりです。

今回は6月に出た新刊の和田隆志 著「ヴィーヴル洋裁店」から。紹介するのは「龍の皮を鞣すのをどう表現するか」という話。

先日放送のDr.STONE,きちんと革鞣し工程がアニメで放送

前回紹介したDr.STONE。

エンターテイメントの革の話をしよう!:ジャンプ連載のDr.STONEにはマニアックな革の描写が行われている | phoenix blog

先日のアニメ放映の際にきちんと口鞣しを表現していて驚きました。
カットされるんじゃねぇかな、と思ったんですが、きちんと放送されましたね、第5話での革鞣し工程。

視聴者の0.01%くらいしかわかんねぇだろうなぁ、あれが何をやっているか。。( ゚Д゚)y─┛~~
動物食べたら、皮から革を取り、靴と服を作る、という工程がきちんと描かれていました。

アニメならば第5話。コミックならば2巻がこの部分となります。

Amazon.co.jp: Dr.STONEを観る | Prime Video

「革」って本に書いてあったら買わなきゃいけない

書店で書いてあったんだよ、漫画の帯に「ドラゴン革のレザージャケットはいかがですか」と。「革」と書いてある以上は買わなきゃいけないんだよ!
過去に何度か痛い目にあっているけど、痛い目に会わなきゃ良いものには会えないんだよ!

ヴィーブル洋裁店はファンタジー世界のテーラーが主役

ヴィーヴル洋裁店〜キヌヨとハリエット〜 【作品TOP】 | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館

ファンタジー、と一言で言うと楽ですが、色々と違いがあります。
ベルセルクだってマイケル・ムアコックだってコナン・ザ・グレートだってハリーポッターだって全部「ファンタジー」というひとくくりですから。

このヴィーブル洋裁店では

・異種族と一緒に暮らしている・言語も同一
・モンスターと意思疎通も可能・言語は不一致
・近代的な機械工具もファンタジー的な表現で使用可能

というファンタジー世界。上記作例で言うならばハリーポッターが一番近いかな。

モンスターと意思疎通が可能だと基本的に「革」は使いづらくなります。
意思疎通可能な種族の皮を使い革にする、というのは話の流れ的に困難だからです。
(BEASTARSなんて獣人世界だから革は使用できないんだろうなぁ)

話の流れ的には

困ったことがある>ファンタジー世界独特の素材を手に入れる>主人公が洋裁テクニックで解決する

というもの。

こういう漫画は作者が現代の要素をどれだけファンタジー世界的な表現に転ずるか、を楽しめるかどうかが読者の楽しさかと思いますわ。

ドラゴン革の話はちょうど第1話

下記で1話は全部読めます。

ヴィーヴル洋裁店〜キヌヨとハリエット〜 【作品TOP】 | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館

で、読めばわかるけど、この世界ではドラゴン皮はドラゴンの脱皮した皮を利用しています。
なるほど、うまいこと流れをつけたな、と感心しました。実際は脱皮した皮で革製品を作るのは不可能ですが、「意思疎通も可能な龍を殺して食べて皮を取る」というのはこの世界観ではあわないわけです。

ファンタジーの割に鞣しが随分と丁寧に解説してくれている

下記リンク先から画像を引用させてもらっていますが、興味あればぜひリンク先を見てください。

ヴィーヴル洋裁店〜キヌヨとハリエット〜 【作品TOP】 | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館

上記図はこのファンタジー世界独特の表現です。
私が「脱皮した皮では普通革は作れない」と書きましたが、それに対してこの漫画では「ドラゴン皮では脱皮した皮でも網状層があるので革になるんですよ」ときちんと書いてくれています。

鞣し工程を書いている漫画やゲームはちょこちょことはあるのですが、きちんと脱脂まで設定している漫画はかなり珍しいですね

タンニン鞣しの解説まで。で、タンニン鞣しは難しいからオリハルコンのクズを使う、とのこと。
さて、これは何をファンタジー世界に応用したのかなぁ、とつらつらと考える。
アルミニウム鞣し?でも単なるミョウバン鞣しだから別に金属のクズから作る、というわけでもないしなぁ、と思いつつ考えると、多分ジルコニウム鞣しのことかな、と。ジルコニウム自体は高額なので、ファンタジー世界御用達の高級金属「オリハルコン」という設定と合致する。

鞣しで使うドラムはファンタジー世界では導入は難しいので、基本は巨大な桶でえっちらおっちらともみほぐしますが、この世界では手動の洗濯機があるんですな。
皮を皮にする鞣しは「腐らないようにする」以外にも「耐熱性・耐薬品性を付与する」という特徴があります。鞣しが進むことで熱に対して強くなります。まぁ、この漫画ではドラゴン革なので耐熱性に優れている、という設定が与えられています。

革包丁ってあまり真面目にかかれないですよね

いつも思うが、革包丁って使い方や持ち方が正しく描写されない道具だな、と。

この持ち方だと刃が食い込むし、テコの力も働かないしで全然効率的ではない。
で、次回のこのblogのネタとして他の作品を紹介してみます。

2話以降は革に関係ないです

人魚の鱗のスパンコールや、一角獣の角での染め、アラクネの糸による布、などと話が続きます。
革の話は1話のみですが、1話冒頭で「革のパンプスは一角獣」と書いてあるので一角獣=馬革のパンプス話でもしてくれるのかなぁ。パンプスはある種とてもおもしろい素材ではあるし、馬革は牛革とは違う面白さがある。
靴漫画の大概が男性靴ばかりなのでこの作者の話の作り方でパンプス話を真面目にやってくれるなら面白そうと思うのだが。

ものづくりが好き・ファンタジーのある程度のお約束がわかる、という人にはおすすめの作品です。

ヴィーヴル洋裁店~キヌヨとハリエット~(1) (ビッグコミックス) | 和田隆志 | 青年マンガ | Kindleストア | Amazon

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